研究実績の概要 |
2022年度は、新しい構造の分子を種々合成し、それらの強誘電性および焦電性において、以下のような成果を得た。 ①強誘電性発現メカニズムの解明:N,N'-bis(3,4,5-tri(S)-citronellyloxyphenyl)urea((S)-1)では、3位と5位への同一のキラリティーの導入が強誘電性発現の必要条件とされていたが、3位に(S)体と5位に(R)体を導入したアキラル体も、予想に反して強誘電性を発現したため、現在、メカニズムの再構築を行っている。(論文投稿を予定) ②新規焦電性化合物の合成:N,N'-bis(3,4-di(S)-citronellyloxyphenyl)urea(U-3,4-Scit )が、結晶化により、電場なしで自発的に分極構造を形成した。第二次高調波発生(SHG)を示し、電場印加で得たものは焦電係数がPVDFと同等であることが判明した。(Materials Lettersに2023年4月8日アクセプトされた) ③分極固定型強誘電柱状液晶化合物:強誘電性液晶相は、外部刺激で分極消失する弱点がある。そこで、ビフェニル基と嵩高いアルキル鎖を有するN,N'-bis(3’,4’-di(2-butyloctyloxy)-1,1’-biphenyl)ureaを合成し、室温付近で分極構造が壊すことなく結晶化する性質を付与することに成功した。このことにより、強誘電性相(50℃付近)で分極の書き込み、室温で固定化というシステムが可能になった。(ACS Applied Nano Materialsに投稿し審査中) ④新規強誘電性柱状液晶相の開発:高速応答と分極維持を両立するため、2つのCF3基を分子中央に有するビフェニルを導入したジアミド化合物(F-10)を合成した。F-10は強誘電性を発現し、高速応答を実現した。(Chemistry Lettersに投稿し審査中)
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