研究課題/領域番号 |
20H02813
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
武田 洋平 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60608785)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メカノクロミズム / 立体配座 / ドナー・アクセプター / 外部刺激応答 / 有機EL / ヘリセン |
研究実績の概要 |
本基盤研究では、"分子同士の相互作用を避けて通れない分子凝集系において、孤立分子としての発光特性をバルクレベルにおいても顕在化させることは可能か?"という問い学術的「問い」に対する解の一つを見出すべく、i) 固体状態において分子間相互作用の影響が小さく、かつii) 外部 刺激によって「分子の動き」に変化をもたらし、分子の基底および励起状態そのものに摂動を与えられる分子設計戦略に基づき多色発光性メカノクロミズを示す分子を創製することを目的としている。2020年度は、これまでに研究代表者が独自に見いだしている発光性メカノクロミズム分子の一般性を検証すべく、電子欠損型ヘリセン骨格にジアリールアミンを電子ドナーとして結合させたドナー・アクセプター・ドナー(D-A-D)分子を合成し、その基礎物性を系統的に調査した。X線構造解析より、一連の化合物はD-A間の捩れ角が大きい構造であることが明らかとなった。さらに、電子ドナーとして硫黄を架橋元素とする電子ドナーを有するD-A-D分子は、期待通り、「擦る・加熱する・溶媒蒸気に晒す」など様々な外部刺激に応じてその発光色が顕著に変化することを見出し、本基盤研究における分子設計の有効性を確かめることができた。さらに、合成した一部の化合物を有機EL素子の発光材料として活用したところ、中程度の外部量子効率を示すことを明らかにした。また、セレンやテルル元素を架橋元素として有するD-A-D分子の合成にも成功し、本基盤研究の今後の推進に有益な知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はこれまで研究代表者が見出してきた発光性メカノクロミック分子の分子設計指針を、新しい分子骨格にも適用できたことから、本基盤研究課題における作業仮説が合理的なものであることが検証された。新たに分子設計指針の一般性を検証するためのモデル化合物の合成にも成功していることから、当初の計画に沿って研究を推進できている。また、本研究を推進するための備品購入も当初の予定通り進んでおり、本研究を効率的に推進する上で非常に役立っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに見出した多色発光性メカノクロミズム分子の設計指針に基づいて、新たなドナー・アクセプター型分子を合成し、引き続きその物性を調査する。
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