本年度は、主に、自己組織化によりヒドロゲルを形成するヒドロゲル化性分子について複数の候補について検討を進めてきた。加圧刺激に対するゲル強度変化において履歴を示すようなヒドロゲルシステムの構築を目指した。特に、シンプルな合成経路により得られるヒドロゲル化剤を探索し、グルコサミンと発色・発光団となる芳香族ユニットをウレタン結合により連結した両親媒性の糖誘導体を3種類合成した。 このうち、ナフタレンとグルコサミンを連結した分子について、ある一定濃度以上で白濁したゲル状集合体を与えることを見出した。電子顕微鏡観察から、ねじれを持ったらせんファイバーの絡まりによりゲル状物体が得られていることが分かった。 このゲル状溶液を高圧セルにより加圧、分光したところ、加圧に従って吸収・発光スペクトルの僅かなシフトが観察された。 さらに、アントラセンーグルコサミン連結体をゲル状溶液にナフタレン誘導体に対して1.5mol%添加したところ、共集合し、ナフタレンで吸収された光エネルギーがアントラセン部位に効率的にエネルギー移動することを見出した。このエネルギー移動効率を指標として圧力応答を評価したところ、加圧に従いエネルギー移動効率が低下し、さらに、除圧をしても常圧状態に戻らないこと、すなわち、加圧ー除圧に対する共集合体の配列変化において履歴が見られた。現在、加圧前後における分子集合構造の変化について赤外分光ならびにX線粉末回折測定により評価を進めている。
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