研究課題/領域番号 |
20H02818
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
赤木 和夫 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (20150964)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | キラル液晶 / 不斉反応場 / 外部刺激応答 / 共役ポリマー / ヘリシティ制御 |
研究実績の概要 |
1. 前年度において新規に合成した温度応答性キラル液晶を用いて、アキラル共役コポリマーへのらせん誘起と円偏光発光性の制御を行った。すなわち、温度応答性キラルネマチック液晶に、等方性溶媒中で合成したアキラル共役コポリマーを加える際に、温度を変えることで、共役ポリマーへの誘起キラリティの向きおよび円偏光発光のヘリシティを制御することを可能とした。具体的には次の通りである。 1-1.ビフェニルとモノフェニル(青色発光)、ビチエニルとモノフェニル(緑色発光)、ビチエニルとモノチエニル(赤色発光)からなる発光性アキラル共役コポリマーを、Still反応あるいはSuzuki反応にもとづくクロスカップリング重合により合成した。 1-2.合成したアキラル共役コポリマーのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、コポリマーの平均分子量および分散度を評価した。次に、蛍光(PL)スペクトルの測定により、三種のコポリマーがそれぞれ青緑赤(RGB)色の蛍光を示すことを確認した。 1-3. 温度応答性キラル液晶中に、合成したアキラル共役コポリマーを溶かして、円二色性(CD)スペクトルの測定により、コットン効果を観測した。これにより、キラル液晶からアキラルコポリマーへのキラリティ転写が生じ、アキラル共役コポリマーにらせん構造を誘起されたことを明らかにした。 1-4.さらに、温度応答性キラル液晶中に溶かしたアキラル共役コポリマーの円偏光発光(CPL)スペクトルを測定して、共役コポリマーの発光過程で円偏光発光(CPL)が発現することを明らかにした。 1-5.温度応答性キラル液晶にアキラル共役コポリマーを加える際の温度を低温および高温に変化させることで、誘起キラル共役コポリマーのらせん構造およびCPLのヘリシティを制御できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、温度や光などの外部刺激に応答してキラル反転する化合物を創成して、これをネマチック液晶に添加して、外部刺激でキラリティ反転を制御できるキラル液晶場を構築する。次に、このキラル液晶を不斉場として、従来にないキラル反転制御可能ならせん状円偏光発光性ポリマー材料を創製することを意図している。 現在までに、高温および低温の温度変化に応じてキラル反転する温度応答性キラル化合物を合成した。また、紫外光および可視光の照射によりキラル反転する光応答性キラル化合物を合成した。 これら二種の外部刺激応答性キラル化合物をそれぞれキラルドーパントして、ネマチック液晶に添加して、外部刺激によりキラリティが可逆的に反転するキラルネマチック液晶系を合成した。さらに温度応答性キラル液晶場にアキラル共役ポリマーを溶かし、ポリマーにキラリティを誘起させることで、円偏光性および円偏光発光性を発現させ、そのヘリシティーを温度の変化で制御することを可能とした。現在この段階まで進展した。今後、光応答性キラル液晶系を用いて、光照射によりキラリティを制御できる発光性ポリマーを創製する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、光応答性キラル液晶を用いた、アキラル共役コポリマーへのらせん誘起とキラル光学特性の制御に重点をおく。 1.青緑赤色の発光性アキラル共役コポリマーを、通常の等方性有機溶媒を用いたクロスカップリング重合により合成する。 2. これら三種の共役コポリマーの蛍光(PL)スペクトルを測定することにより、それぞれの発光色と発光波長領域を明らかにする。また、PL測定時に積分球を用いて、コポリマーの発光量子収率を見積もる。 3.ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、コポリマーの平均分子量および分散度を定量的に評価する。 4. 光応答性キラル液晶に、上記のアキラル共役コポリマーを溶かして、キラル液晶からアキラルコポリマーへのキラリティ転写を通じて、アキラル共役コポリマーにらせん構造を誘起させる。 5.円二色性(CD)スペクトルおよび円偏光発光(CPL)スペクトルの測定により、共役コポリマーへのらせん構造の誘起、および円偏光発光(CPL)の発現を可能とする。吸収および発光過程における非対称性因子(g値)を評価し、高度のヘリシティと高い量子収率を実現する。 6. 紫外光および可視光を照射することで共役コポリマーのらせん構造の左右の向きとCPLのヘリシティを制御する。
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