研究実績の概要 |
本年度はNi, Fe, Coを基盤とする新規自己修復触媒の組成検討を行い、本研究課題で目標としている酸素発生反応(OER)過電圧300 mV以下の高活性を実現した。昨年度までにNi, Fe二成分系のハイブリッド水酸化物ナノシート触媒において、高いOER活性を見出したが、この触媒は従来のハイブリッド水酸化コバルトナノシートからなる自己修復触媒と比べると分散性が低く、触媒堆積能や自己修復能の低下があった。本年度の検討では、これらの課題を解決するため、Ni, FeにCoを加えた三成分系にてハイブリッド水酸化物を合成し、高活性かつ高分散性である触媒組成を発見するに至った。 種々の組成の触媒のOER活性を検討した結果、OER活性は主にFeの含有量で制御することが可能であり、Fe70%程度で良好なOER活性が達成された。しかし、Feの含有量を大きくすると、OER活性のある触媒は得られるものの、結晶構造が層状構造からアモルファスに転移し、この様な触媒では耐久性が低くなる傾向があることが分かった。従って、高活性、高耐久性を両立した自己修復触媒の実現のためには、組成に加えて結晶構造ないし粒子形態を制御する必要があることが明らかとなった。 一方、ハイブリッド水酸化コバルトナノシートをモデル触媒として触媒層の成長過程を検討した結果、本触媒系におけるOER電流は触媒堆積量に比例し、単純なモデルにより説明できることが分かった。従って、高い耐久性を維持するためには、自己修復触媒を常に電極上に厚く堆積させることが有効であると示された。 以上より、本年度は高活性な触媒組成と、耐久性を維持するための条件を確認することが出来た。
|