研究課題/領域番号 |
20H02824
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北條 元 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (90611369)
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研究分担者 |
永長 久寛 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (90356593)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 形態制御型ナノ粒子 / エピタキシャル歪み / 透過電子顕微鏡 / 電子エネルギー損失分光 |
研究実績の概要 |
酸化物触媒における格子酸素の反応性は、しばしばその触媒活性に大きな影響を与える。本研究はCeO2を対象として、高い反応性の格子酸素を実現するための材料設計指針を確立することを目的としている。 2021年度は反応性制御指針のもう1つの方針として格子歪みに着目して研究を進めた。CeO2と同じ蛍石型構造をもち、格子定数が小さなイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の(001)面基板上にパルスレーザー堆積法を用いて種々の膜厚のCeO2薄膜を作製し、その薄膜の構造と内部領域および表面の酸素空孔量を、断面方向から原子分解能の走査透過電子顕微鏡観察と電子エネルギー損失分光(EELS)測定を行うことで評価した。薄膜が200nm程度と厚いときには、CeO2薄膜はYSZ基板の拘束から十分緩和した構造となっていることを確認した。EELS測定の結果、薄膜の内部領域はCeは量論組成から予想されるとおり4価であったが、表面近傍の4原子層程度までは一部3価の状態が混じっており、酸素空孔が導入されていることが確認できた。この酸素空孔の存在する層の厚さは水熱合成法により作製した立方体CeO2で観測された厚さ(10原子層程度)よりも薄い。このことは少なくともSTEM観察のための試料加工により過剰な酸素空孔が導入されている訳ではないことを示唆している。続いて、膜厚が2nmから5nmの極薄膜を観察したところ、2nmでは面内格子がYSZ基板に拘束された状態であり、厚さが増えるに従いその拘束が緩和していく様子が確認できた。EELS測定を行ったところ、2nmの膜厚ではCeの価数はすべて3価であり、膜厚が増えるに従って4価の割合が増えることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CeO2エピタキシャル薄膜において、膜厚により格子歪みの程度を調整することで、薄膜中の酸素空孔量を制御可能であることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、表面での酸素空孔量と格子酸素の反応性には相関があることを示唆する結果が得られている。さらに酸素空孔量は格子歪みにより制御可能であることもわかった。2022年度は、微少表面積の触媒評価が可能なシステムを立ち上げ、これらの薄膜の触媒活性を実際に評価する予定である。また、形態制御型CeO2についても研究を進め、元素置換や異相界面形成を試みる。これらの試料についても格子酸素の反応性を評価することで、格子酸素の反応性を支配する因子を抽出する。
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