研究課題/領域番号 |
20H02827
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
本橋 輝樹 神奈川大学, 工学部, 教授 (00323840)
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研究分担者 |
土井 貴弘 東邦大学, 理学部, 准教授 (20359483)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結晶構造 / 金属酸化物 / 配位不飽和 / 結晶構造化学 / レドックス |
研究実績の概要 |
配位不飽和金属サイトを基本骨格とする金属酸化物について、結晶構造化学に基づく材料設計原理の構築と、特異な結晶構造に由来した新規機能性材料の開拓を目的とした。 従来の環境・エネルギー材料研究では酸素原子を高密度に含み「配位飽和」金属サイトからなる金属酸化物が主に取り扱われてきた。本研究では、環境・エネルギー分野において未踏化合物であり、配位数の小さな金属サイトを基本骨格とする「配位不飽和型金属酸化物」に着目した。当該化合物の材料設計原理を構築し、配位不飽和サイトに起因した酸化還元(レドックス)活性を活用することにより、酸素貯蔵、酸素反応電極触媒、酸化還元触媒などへの応用展開を図った。 今年度の主な成果は以下の通り。(i)メリライト型マンガン酸化物Ba2MnGe2O7+δ (BMG) が温度および酸素分圧の変化に応じて高速可逆に酸素吸収放出し、新規酸素貯蔵材料として有望であることを見出した。(ii)BMGにおける中性子回折データを用いた精密な結晶構造解析により、酸素吸収相Ba2MnGe2O7.4が未知の超格子構造をもつことを確認した。(iii)ペロブスカイト関連鉄酸化物Ba2YFeO5+δ (BYFO) において温度・雰囲気変化に応答した顕著な酸素吸収放出を発見した。BYFOの酸素吸収放出反応は150~210℃の低温域で起こることから、本化合物が低温動作型の酸素貯蔵材料として有望であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実施計画で目標とした研究成果を得ることができた。 ・研究対象としてメリライト型金属酸化物に着目し、Mn含有メリライトにおいて酸素貯蔵能を発見した。また、配位不飽和サイトを含むペロブスカイト関連Fe酸化物においても顕著な酸素吸収放出挙動を見出した。 ・メリライト型Ba2MnGe2O7+δ (BMG) の中性子回折データを用いた構造解析により、当該化合物の結晶構造モデルを構築することができた。 ・上記2化合物の酸素吸収放出特性を詳しく調べた結果、両化合物とも新規酸素貯蔵材料として有望であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究成果を基盤にして、以下の実験項目に着目する。 ・BMGにおける酸素吸収相の結晶構造を決定する。得られた結晶構造データに基づき電子構造計算を実施し、配位不飽和型金属酸化物がペロブスカイト型やスピネル型などの従来型化合物と異なる電子状態を有するかどうか調べる。 ・配位不飽和構造をもつ遷移金属酸化物の調査を継続し、新たな研究対象化合物を選定する。本年度は、電極触媒材料開発を想定し、MnおよびNiイオンの配位不飽和構造をもつ化合物を重点的に調査する。 ・得られた化合物について、酸素関連分野におけるレドックス機能性材料としての応用の可能性を検討する。具体的には次の機能性に着目して種々のキャラクタリゼーションを実施し、各機能の結晶学的支配因子を調べる。(1) 酸素貯蔵能、(2) 酸素還元反応 (ORR)・酸素発生反応 (OER)、(3) 酸化還元触媒活性。
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