研究課題
300℃以上でH-超イオン導電性を示すBa-Li系酸水素化物(以下BLHO)について、追加実験などを経てNature Materials誌への論文掲載に至った。また、BLHOのH-導電機構を明らかにするために、中性子回折による核密度分布解析とMDシミュレーションをおこない、H-の集団運動を示唆する結果を得た。BLHOは相転移を経て超イオン導電性が発現するため、元素置換を施し、BLHOの超イオン導電相の安定化を試みた。2021年度は、主にBaおよびLi位置への多元素置換を施し、相転移温度を240℃まで低下させることに成功した。また、蛍石型構造の水素化物を対象にした物質探索を新たに検討し、室温 ~ 100℃付近での固体電解質性能を確認した。H-導電性の電極材料については、遷移金属酸水素化物BaTiO3-xHx(以下BTOH)がH-/e-混合伝導体であることに着目し、電極としてに機能するかどうかを検証した。BTOHとH-導電体LaSrLiH2O2を加圧焼結した対称セルを作製し、水素雰囲気下での電荷移動抵抗を調べ、BTOHが水素透過性電極として機能することを実証した。また、BTOHをメカノケミカル法で合成することに成功し、従来法よりも水素量(x)が増大することを見いだした。水素量の増加によるH-導電性の向上が期待できる。デバイス化に向け、電極材料候補であるBTOHを電解質ペレットにスパッタ法で直接成膜することに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
BLHOに関する成果をNature Materials誌に掲載することができただけでなく、BLHOを基にした物質探索を展開することで、H-超イオン導電相を低温まで安定化させる物質設計指針を得ることができた。H-超イオン導電相におけるH-と格子と相互作用に基づくH-の集団運動を示唆する実験結果と計算結果も得られており、新たな学理の構築に繋がる知見が集まり始めてきた。また、蛍石型構造の水素化物を対象にしたの新たな物質探索から、H-導電体として機能する物質群を見出せており、固体電解質の候補材料が拡張されてきた。電極材料についても、これまで分野全体で未開拓であったH-導電性の電極材料についても、BTOHの水素透過性を実証できたことで、メカノケミカル法を適用した新規電極材料探索から、水素ポンピング試験などのデバイス反応まで新たな研究展開が可能になった。
【固体電解質開発】BLHOに関する研究成果に基づく物質探索を進展させ、200 ℃付近で実用レベルの導電率(10 mS/cm)を示すH-導電性固体電解質材料を創出する。また、室温付近で金属水素化物の電子伝導性を抑制してH-導電体として機能させる方法を確立しつつあることを活かし、室温付近で作動する固体電解質の開発を目指す。【H-導電機構解析】核密度分布解析とMDシミュレーションで示唆されたH-超イオン導電状態におけるH-の集団運動を検証するために、PDF解析と中性子準弾性散乱測定を実施する予定である。【電極】メカノケミカル法が遷移金属酸水素化物の合成に適用できるというBTOHの研究から得られた知見に基づき、新規電極材料の探索をおこなう。また、電極候補となる材料の水素透過性と電荷移動抵抗を調べる。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件)
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