研究実績の概要 |
金属-絶縁体転移の境界領域にあるペロブスカイト関連構造のBa1-xSrxIrO3(x=0,0.05,0.1)を固相法によって合成し、その酸素発生触媒能を測定した。酸素発生触媒能の評価には、「触媒担持液を塗布した回転リング-ディスク電極」を用いて、固体高分子形(PEM)水電解セルへの応用を念頭に酸性電解液中(0.5 M H2SO4)で電気化学測定を実施した。酸素発生触媒能は過電圧と電流密度によって評価した。また、酸素発生反応に対する耐久性は酸素発生反応を1000サイクル繰り返した後の触媒能を1サイクル目の触媒能と比較して評価した。酸素発生反応前後のIrの価数はX線吸収分光法によって観察した。 その結果、Ba1-xSrxIrO3(x=0,0.05,0.1)は初期活性だけでなく耐久性においても、典型的な酸素発生触媒であるIrO2よりも高く、また反応の前後でIrの価数はほぼ一定であることが明らかになった。BaIrO3と比較して、Ba1-xSrxIrO3(x=0.05,0.1)の触媒安定性は同程度であったが、初期活性は増強された。Ca1-xSrxRuO3のケース(Hirai et al., J. Mater. Chem. A7, 15387-15394 (2019))と同様に、初期活性の増強は、SrによってBaの一部を置換することで金属-絶縁体転移の境界領域に近づいたためと考えられる。また、触媒安定性が同程度であったのは、母物質であるBaIrO3の構造安定性が十分に高いことを示唆している。これらの研究成果について、2021年3月開催の日本材料科学会 マテリアルズ・インフォマティクス基礎研究会において招待講演を行い、2020年7月開催のマテリアルズ・インフォマティクス基礎研究会および同年12月開催の日本材料科学会 電池・レーザー材料研究会において学会発表(口頭発表)を行った。
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