研究実績の概要 |
酸性電解液中でも、酸素発生反応(OER)に対して高い安定性を誇る結晶構造の代表例は、BaIrO3の結晶構造である。しかし、BaIrO3の場合、多数サイクルを経るとともに、最表面の組成が変化してしまい、OERに対して安定な表面構造を保つことができず、最終的には酸素発生触媒としての安定性が低下してしまうという課題があった。この課題を解決するために、BaIrO3のIrサイトをMnで置換した結果、OERに対する安定性の強化だけでなく、初期活性の増強にも成功した。そこで、BaIrO3のIrサイトをMnで置換した材料に対して、OERによる元素の溶出とOER前後のIrの価数変化を含めた、酸素発生触媒能の詳細な評価・検討を行った。その結果、酸性電解液に対してIrよりも溶けやすい元素でIrサイトを置換することで、OER中にIrが僅かに溶出しやすくなり、BaとIrの溶出量の差を小さくなることで、最表面の化学組成を保つことができることが明らかになった。すなわち、最表面の化学組成を保つことで、BaIrO3本来の安定な結晶構造が表面構造でも反映されるため、OERに対して安定なだけでなく、高活性を示す二元機能性を有した最表面の形成に成功したと言える。本研究の成果をまとめたものについては、オープンアクセスジャーナルのRSC Advances誌において発表した(Hirai et al., RSC Adv. 12, 24427-24438 (2022))。 このように、本研究で開発したBaIrO3のIrサイトをMnで置換した触媒は、酸性条件下のOERに対して高活性と高耐久性を兼ね備えた非常に優れたものであり、エネルギー変換分野の電極として実用化できるOER触媒と結論づけられる。
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