研究課題/領域番号 |
20H02834
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
泉 康雄 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (50251666)
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研究分担者 |
小西 健久 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (40302525)
糸井 貴臣 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (50333670)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CO2 / 光燃料化 / 光資源化 / 多電子還元 / コバルト / 酸化ジルコニウム / C2,3 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
持続可能なCO2光還元を可能にする光触媒の研究・開発を行ってきた。酸化ジルコニウム(ZrO2)にニッケルを組み合わせることでCO2からメタン合成できることを本課題2020年度に報告したが、同様に多電子還元してC2以上の高付加価値生成物を得ることで、CO2光還元が経済的に成り立ち得ることを提示することを2021年度の目標とした。
ZrO2にコバルトを組み合わせることで、CO2からメタン、エタン、プロパンが得られた。Ni-ZrO2光触媒と類似して、前処理として還元処理を行う必要があり、823 Kで水素処理を行った場合、最も高活性であった。その条件では、金属状Co(0)サイトとCo(II)Oサイトが共存していたが、前者がCOから炭化水素への活性サイトと考えられる。後者は可視光を吸収し電荷分離することで、紫外光を吸収し電荷分離するZrO2の役割を手伝った可能性がある。 Ni(0)ナノ粒子と同様に、Co(0)ナノ粒子も紫外可視光全域を吸収することで380 K以上に加温されることでCOから炭化水素生成が進むこともX線吸収微細構造追跡により示された。このC2以上の合成経路を調べるために823 K還元Co-ZrO2光触媒について、13COとH2を反応物として、生成物の経時変化も追跡したところ、CH2種からエチレン、さらにエタン、プロパン、プロピレンへとC-Cカップリングしていく反応経路を確かめた。第一原理計算によっても、COからC-Cカップリングする過程を検討した。
Co(0)表面ではZrO2上で生成したCOからさらにC-Cカップリングが起きやすいため、また触媒の処理過程から考えてCo(0)ナノ粒子とCo(II)Oナノ粒子が接した状態でCO2光還元反応用に供されているため、CoOに可視光照射することで生じた電子がより有効的にCo(0)サイトへ供給され、C2, 3化合物が生成された、と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CO2光燃料化、および光資源化について、2020年度で報告したメタン生成ばかりでなく、エチレンおよびプロピレン生成に成功するなど、着実に新たな光触媒について検討を進んでいるため。
さらにその作用機構を広域X線吸収微細構造(EXAFS)、同位体ラベルによる赤外分光やガスクロマトグラフ-質量分析による追跡、高分解能電子顕微鏡観察による明らかにしているため。具体的には、本研究チーム独自の相関デバイモデルによるEXAFSでのサイト温度測定や13CO2やD2O標識によるGC-MSオンライン反応追跡等、オリジナルの手法で新知見を得ているため。
まとめると、よりエチレンおよびプロピレン生成に選択的な光触媒の開発やそのための支配機構を目指しているが、本研究自体はおおむね順調に進展している、と考えた。
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今後の研究の推進方策 |
Coの還元状態や粒径、およびZrO2の酸素欠陥濃度を段階的に制御するすることで、C2+、特にエチレンおよびプロピレンの選択性向上を試みる。また、コバルトとニッケルおよび銀とのcore-shell合金触媒も合成し、C2+選択性や環境雰囲気での光触媒の安定性を見る。
EXAFS・HR-TEM・HAADF-STEM・AFMを用いて、ナノ結晶径や合金構造・格子縞・原子番号の2乗に比例する輝度での合金組成・超薄層深さを観測し、core-shell構造, 超薄層を含む半導体との複合を立証する。 紫外領域から可視光領域全域にわたり、10 nm間隔でパルス光を上記の一連の開発した光触媒に照射し、半導体(ZrO2等)が光による電荷分離、金属ナノ粒子(Ag, Ni, Co等)が光エネルギーを起源とする熱的な触媒反応促進を行っているのか、どの波長の組み合わせが有効なのか、見極めて行く。 13CO2 + H2および13CO2 + moisture下で紫外可視光照射し13CO2還元試験を行い、還元前処理の効果、合金の創り分け・表面欠陥サイトのCO2還元への寄与を定量化する。多電子供給によるC2+生成には欠陥サイト数だけでなく、一定以上の超薄層[結晶子]サイズが必要かどうか、評価する。分離した電荷が金属/合金ナノ粒子-超薄層半導体中を伝播しやすいか、インピーダンス測定により検証する。H2(18)Oも利用して、酸化側反応機構も詳しく見る。 各触媒について分子種変換に金属および超薄膜の結晶面・両者の界面・欠陥サイトの因子を加え、第一原理計算から各中間種のエネルギー・活性化エネルギーΔE(act)最小の素過程を特定し、実験と対照する。具体的には、酸素欠陥サイトへのCO2の吸着、プロトン付加、COおよびホルムアルデヒド生成、さらにCHx種を経てC2+に至る経路を探る。
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