研究実績の概要 |
元素戦略的に有利かつ2電子反応を活かしたマグネシウム二次電池は有望な蓄電池システムである.しかしながら,その負極においては,ほとんどがMg金属の析出-溶解反応を用いたものに限定される.本研究では,従来のリチウムイオン電池負極材料として使用される黒鉛をホスト材料とし,その層間へのMgイオン挿入について検討した.初めに,Mg析出-溶解反応に用いられる典型的な有機電解液として,Grignard試薬(1 M EtMgCl/THF)を検討したものの,合剤電極上にMg析出が確認されるのみで,Mg2+を含む黒鉛層間化合物は得られなかった.そこで,誘電率の異なる溶媒(Dimethoxyetane, sulfolane, tetrahydrofuran, propylene carbonate, acetonitrile, glymeなど)を幾つか選択し,これらにMg(TFSA)2を溶解させた電解液を調製した.特定の電解液において,黒鉛層間に溶媒和Mgイオンが挿入することを明らかにした.このとき,層間距離は3.35 Åから約11 Åまで大きく膨張しており,このことからも挿入イオンが溶媒和Mgイオンであることが示唆される.また,挿入(充電)状態の黒鉛においては,気相合成法から得られたMg-solv-GICと同様に青色を呈色することも確認した(論文投稿中).しかしながら,層間からの溶媒和Mgイオンの脱離においては,その可逆性に乏しく,反応可逆率を向上させることが電池反応への応用において重要な課題といえる.現在は,可逆性が低い原因を追究しているところである.
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