研究実績の概要 |
昨年度までに,ドナーナンバーの異なる溶媒を複数選択し,嵩高さや配位能などのMg2+の溶存状態に着目し,Mg2+-黒鉛層間化合物の電気化学形成挙動について調査を行ってきた.これらの検討において,配位子をともなう溶媒和Mgイオンが嵩高い場合には,黒鉛層間化合物が形成されにくいことを確認している. 本年度は,アルカリ金属イオンに特に選択的に配位するクラウンエーテルを選択し,従来までに検討してきた種々溶媒にMgイオンと等モルの12C4, 15C5, 18C6を含む電解液系について調査を実施した.その結果,従来のリチウムイオン電池(LIB)系で汎用的に使用されるEC:DEC(50:50 vol.%)において,15C5を加えた系に黒鉛層間化合物の形成が認められた.他方,12C4, 18C6を加えた場合では電解液の還元分解のみに電流が消耗される結果となった. DMEの場合では,18C6を加えた系のみ同様に黒鉛層間化合物の形成が見られた.これらのことは,溶媒とクラウンエーテル間の配位能の違いによるものと考えられる.例えば,EC:DEC系においては,15C5を加えたときのみ,主な配位子がECから15C5に置き換わったことをラマン分光測定から確認している.EC:DECの系ではstage-8,DMEの系ではstage-5のの三元系層間化合物をXRD測定から検出した.最近接配位子が嵩高い溶媒種(EC, DME)からクラウンエーテルに置き換わり,溶媒和Mgイオンが平面性の高い状態すなわち嵩高さが低減したことがこれらの要因であると推察している.これらの溶媒和Mgイオンの挿入-脱離の可逆性を検討した結果,最大で80 mA h g-1の(放電)容量を得ることができた.引き続き,その可逆性や挿入-脱離容量について検討を行う予定である.
|