二酸化炭素(CO2)から燃料(アルコール)を合成する研究開発(CO2の固定化)は、環境と資源・エネルギーの問題を同時に解決可能となる技術である。しかし、CO2から一酸化炭素COへの還元反応は、標準電位が-0.53V vs. NHEであり、H2生成反応の標準電位(0V vs. NHE)より卑電位側であるため、水溶液中でH2生成反応の阻害を受けずにCO2を電気化学に還元、あるいは光触媒により還元することは困難である。このため、高活性(H2生成とCO2還元の分離)と高耐久性を併せ持つCO2還元電極の具現化には未だ至っていない。 Si添加a-C半導体は、①バンド位置を任意に制御可能で、価電子帯上端が水の酸化準位より下に位置し、伝導帯下端をCO2の還元準位より上に制御することができる。また、②紫外光照射下で自己酸化せず、③H2発生過電圧が高い。合成時に対象化合物に吸着性を示す原料の添加で、④COラジカル吸着サイトを導入できる。さらに、我々が独自開発した細孔板を導入した局所集中プラズマ合成法により、⑤空間電荷層を形成しない小さなナノ粒子化(直径15 nm)も可能である。以上、CO2還元光触媒に求められる五つの要件を満している。 本研究課題3年目の本年度では、a-C半導体ナノ粒子の伝導体下端の位置を水素生成電位とCO2還元電位の中間に制御することによる光励起電子のH2発生反応の移動抑制と、令和3年度の成果であるa-C表面へアミノ基とカルボニル基を導入しCO2吸着性を向上させる制御を組み合わせることにより、高効率にCO2還元反応を起こすことの可能な光触媒を実現した。つまり、CO2を光エネルギーによりギ酸へ転換するa-C光触媒を用いた技術を構築することに成功した。
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