研究課題/領域番号 |
20H02847
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
横野 照尚 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (10203887)
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研究分担者 |
村上 直也 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (10452822)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | グラファイト型窒化炭素 / 過酸化水素生成 / 酸素還元 / 原子状金属イオン修飾 / 励起状態電荷分布状態計算 |
研究実績の概要 |
過酸化水素(H2O2)は,衣料用の漂白剤・食品の処理・消毒剤などの身近な用途から,医療用殺菌や半導体プロセスにおける洗浄などの幅広い用途で利用されてきた.近年では持続可能な環境社会の実現に向けて,水素にかわる燃料電池の燃料として,また,環境負荷の低い有機合成用酸化剤として利用する試みがある.問題点として,①H2O2は工業的にはアントラヒドロキノンを触媒として多段階・エネルギー多消費型反応で合成されるために高価であり,環境負荷が大きい.また,②高濃度のH2O2は爆発性を有するために貯蔵蓄積ができないという短所を有しています。そのため、太陽光などの光エネルギーのみを用いて水と酸素から常温常圧で過酸化水素を高効率で製造する触媒およびシステム開発を継続して行ってきた。その結果、グラファイト型窒化炭素(C3N4)の剥離処理:通常の合成により得られるC3N4は層状構造のバルク体を形成しやすいため,研究代表者が開発した剥離処理(ナノシート化)を行い,比表面積を増大させる.硫酸と重クロム酸カリウムにより,C3N4試料の外縁部を選択的に酸化してカルボン酸などの官能基を導入し,安定なC3N4ナノシートを得る.これを,[1-1]で合成した試料,もしくは[1-2]の含浸前の試料に適用する.また,剥離処理により外縁部へ電子吸引基が導入されるため,電荷分離を促進させるバンドベンディングが形成され,これによる活性が大きく向上した.その他、C3N4光触媒の吸収波長をより長波長にシフトさせて、利用可能な波長領域の拡大の技術的方法について検討を行った。. さらに、 助触媒の担持:酸素還元によるH2O2生成反応の対反応となる水の酸化反応の活性を向上させるために,リン酸コバルト助触媒(Co-Pi)を合成したC3N4材料上に光電着し,全反応の活性を向上させた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水と酸素からのH2O2製造は、グラファイト型窒化炭素(C3N4)、エネルギーを消費するアントラキノン法の代替法として期待されている。しかし、酸化力が不十分であること、光吸収に限界があることから、さらなる改良が求められていました。本年予定していた剥離法他、2,5,8-triamino-tri-s-triazine (melem) とバルビツール酸 (BA) の共重合により、十分な酸化電位と可視光利用性(440nmから550 nmまで)を改善した新規なPCNを開発した。水の酸化助触媒としてNa2CoP2O7を添加したこの新規PCNシステムは、見かけの量子効率(420 nm)で8.0 %、H2O2生成のための太陽-化学変換効率で0.30 %という過去最高を記録した。これは、PCNマトリックスに残存するCdouble bondO基によってO 2p状態が導入され、正の価電子帯最大値1.85eV(対SHE)が得られたことに起因している。また、BAとmelemの共重合とNa2CoP2O7の担持により電荷再結合が抑制され、1電子-1電子反応が速やかに起こり、H2O2生成が効率的に行われるようになったことがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
グラファイト型窒化炭素(C3N4)誘導体の電荷分離効率を飛躍的に向上させてるために、骨格内にあるアミン部位に種々の金属イオンを導入した金属単原子光触媒(M-SAPC)を開発し、H2O2生成を促進するための指針を確立する。電子配置と励起特性の系統的な解明が極めて重要である。ここでは、グラファイト型窒化炭素(C3N4)誘導体骨格中のピリジン系N原子によって3種類の遷移金属(Fe, Co, Ni)と2種類の主族金属(In, Sn)などの合成法について検討する。合わせて励起状たの電子とホールの分布状態についてTD-DFT計算の可能性について検討を行う予定である。
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