研究課題/領域番号 |
20H02854
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研究機関 | 一般財団法人電力中央研究所 |
研究代表者 |
小林 剛 一般財団法人電力中央研究所, エネルギートランスフォーメーション研究本部, 主任研究員 (00637994)
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研究分担者 |
大渕 博宣 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 産業利用・産学連携推進室, 技術員 (40312996)
大沼 敏治 一般財団法人電力中央研究所, エネルギートランスフォーメーション研究本部, 上席研究員 (50371290)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リチウムイオン電池 / 混合正極 / スピネル酸化物 / 層状酸化物 / 充放電試験 / 界面反応 / X線吸収微細構造測定 / X線回折測定 |
研究実績の概要 |
市販リチウム電池の正極には、二種類の酸化物正極(スピネル酸化物LiMn2O4(LMO)と層状酸化物LiMO2(M=Ni,Co,Mnなど))が利用され、層状酸化物の混合によりLMOの充放電サイクル特性が改善している。この混合効果は、LMOからMnイオンの溶出抑制であり、Mnイオン溶出につながる電解液中で発生したHFを、LiMO2が補足している反応機構が報告されている。しかし、電解液中に発生したHFが、LMOより優先してLiMO2と反応する理由は見当たらず、Mnイオン溶出の抑制機構は未だ解明されていない。 そこで本研究の目的は、LiMO2を混合することでLMOの充放電サイクル特性が向上する詳細な機構を解明することである。 LMO、LiMO2およびLMOとLiMO2の混合正極を用いたセルを作製し、充放電サイクル試験を実施した。LMOおよびLiMO2のセルにおける容量Qを電圧Vで微分したdQdV曲線は、いずれの正極でもVに対してピーク強度は低下したものの、充放電サイクル前後でピーク形状に大きな変化は見られなかった。一方混合正極のセルでは、充放電サイクル試験によりLiMO2に由来するピークがほとんど見られなくなり、また混合正極の未劣化セルより低い電圧に、新しいピークが観察された。充放電サイクル試験を実施した混合正極のX線回折測定を実施して、LiMO2由来の回折線がブロード化していることがわかった。さらにX線吸収微細構造測定を実施して、LiMO2の低価数化が起こっていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
劣化した混合正極における電気化学的および分光的分析を実施し、混合正極特有の挙動を捕まえることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
電気化学的および分光的分析結果から混合効果を明らかにできる追加の実験および理論的考察を行う。
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