研究課題/領域番号 |
20H02855
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
永次 史 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90208025)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | RNA高次構造 / 選択的アルキル化 / 大規模解析 / RNA標的創薬 |
研究実績の概要 |
non coding RNA (ncRNAは多数の類似した高次構造を形成するため、これらを標的としたRNA結合性小分子の報告例は限られている。本研究ではRNA標的創薬を指向し、多様なRNA高次構造に対して化学反応性を持つ分子の真の選択性解析法の確立及びそれを用いた新しい構造反応性相関研究への展開、さらにはこれらの結果得られた高い選択性を持つRNA高次構造反応性分子を用いた細胞内標的の効率的阻害を目的とした。本解析法を確立することで、まず特定の化学反応性分子に関する大規模な反応特性情報(反応するRNA高次構造のランク化による選択性情報)が得られる。さらにこの解析法を用いて、反応性分子ごとの高次構造RNAに対する大規模な構造反応性相関情報を明らかにできる。具体的には、RNA小分子間相互作用大規模解析を可能とする方法を基本に、反応性分子のRNA高次構造に対する選択性を大規模に解析する手法を確立する。 既に我々は通常の条件では安定で標的G4-DNA高次構造に近接しアルキル化反応が誘起されるOFF-ON型反応性分子として、ビニルキナゾリノン誘導体(VQ)を開発している。1昨年度はこの分子を用いて、Barcode microarray法により効率的にアルキル化が進行するRNAの配列情報を得ることに成功した。昨年度はまず、得られた配列情報に基づき、上位の配列として得られたpre-miR221を用いて、VQ誘導体のアルキル化反応について詳細に検討した。その結果、VQ誘導体はpre-miR221に効率的に反応すること、さらにmir-221のどのUと反応しているかを逆転写反応の停止を用いて調べたところ、インターナルループ構造近傍のUに対してのみ反応していることがわかった。pre-miR221は大腸がんや乳がんのがん幹細胞で過剰発現しており、がんの治療標的としても興味がもたれる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本申請研究では、RNA標的創薬を指向し特定のRNA高次構造に高い選択性を持つRNA反応性分子の開発を目指している。1昨年度には、Barcode microarray法によるRNA高次構造アルキル化分子の解析手法の確立に成功し、我々のアルキル化分子が反応するRNA配列情報をえることができた。昨年度は、この得られたRNA配列情報に対するアルキル化について詳細な検討を行った。さらにアルキル化分子であるVQ誘導体の反応性改善を目指し、安定前駆体分子の脱離基の検討を行った。その結果、脱離基としてアミノ基を用いることで、従来用いていた誘導体よりも安定で反応性が高い誘導体の開発に成功した。本検討については申請書には述べていなかったが、より広範な検討を行うためには、反応性分子の改善が必要であることがわかったため、この点について検討した。今後はこれらの反応性分子を用いることで、本研究目的をより効率的に達成できると期待されることから、当初の計画以上に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度はさらに、アルキル化分子の多様性拡大を目指し下記の2点について検討を行う 1)様々なRNA高次構造結合分子を持つVQ誘導体の合成:昨年度までにモデル化合物としてアクリジンを結合したVQ誘導体を用いてBarcode microarray法を基本としたRNAアルキル化分子の結合選択性解析手法を確立した。本年度は、昨年度開発に成功した新たなVQ誘導体を用いて、RNA結合部位としてベルベリン誘導体と複合した分子を用いて、アルキル化するRNA配列情報を取得する。 2)より効率的に機能するOFF-ON型反応性分子の開発:我々はOFF-ON型分子としてVQ誘導体を開発している。今年度はさらに反応分子の拡張を目指し、新たなOFF-ON型反応性分子を開発する。すでに、我々が開発しているビニル化学に基づき設計した分子として、VQ誘導体よりもコンパクトな分子として、ピリミジン骨格を基本とする反応性分子について検討を行う。まず、これらの分子とRNA結合部位として従来用いていたアクリジンを複合化した分子を合成し、RNAに対する反応性について検討を行う。
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