研究課題
光合成細菌の最もコアな部分である光捕集反応中心超分子複合体(LH1-RC)は、特異な分光学的性質とユニークな立体構造をもつ。本研究では、様々な極限環境下に生きる光合成細菌(好熱、好冷、好塩、好アルカリ、好酸など)を用いて、(i)光捕獲と光電変換を司るLH1-RC複合体の特異な分光学的挙動の特定、(ii)過酷な生育条件にも耐えうる光合成膜とLH1-RCの構造安定性の評価、(iii)これらの分光学的特性と構造安定性をもたらす構造的要因の原子レベルでの解明を目的とする。本研究で得られる知見から、より実用性の高い高効率の集光アンテナと光電変換素子の作成ならびに人工光合成システムの構築に対して根拠となる設計指針を与える。今年は最終年度に当たり、これまで最も良く研究されてきたモデル紅色硫黄光合成細菌Allochromatium vinosum由来の光捕集反応中心複合体LH1-RCの構造を決定した。今まで報告された生育時にCaが必要な種の立体構造と異なり、このLH1-RCは一部にのみCaイオンが結合できることがわかった。結合位置はタンパク質精製時のCaイオン濃度に影響されないことから、生育時に取り込まれたものと考えられ、かつ結合位置も一定していることまでわかった。類縁種で温泉に棲息するThermochromatium tepidumでは16個あるLH1サブニットのすべてにCaが結合しているのに対して、本種では16個あるLH1サブニットのうち6個にまで減少していた。Caイオン結合位置付近のアミノ酸配列には複数のパターンがあり、この配列バリエーションに応じてCaイオンが結合できるかどうかが決まっていることを明らかにした。この成果は国際学術誌(Communications Biology 7, 176; 2024)に掲載された。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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Communications Biology
巻: 7 ページ: 176
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