研究課題/領域番号 |
20H02862
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
口丸 高弘 自治医科大学, 医学部, 准教授 (10570591)
|
研究分担者 |
岩野 智 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 客員研究員 (10734832)
近藤 科江 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (40314182)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 近接細胞蛍光標識 / 1細胞オミクス / 細胞間相互作用 |
研究実績の概要 |
生体組織において、細胞間相互作用は組織恒常性の維持や疾患の発生・亢進に決定的な役割を担う。本研究では、実験モデル動物の生体組織において、特定の細胞と近接して相互作用する細胞をその場で蛍光標識し、破砕組織から相互作用パートナーの同定を可能にすると共に、パート ナー細胞に相互作用した時間過程情報を記録する新規の近接細胞の蛍光標識技術の開発を目指した。さらに、開発した技術を、生体における細胞間相互作用の未解決問題の一つである、がん細胞と組織構成細胞の相互作用メカニズムの解析に実装するために、蛍光標識を頼りにマウス生体組織から単離した相互作用パートナー細胞の1細胞オミクス解析を組み合わせた解析パイプラインを構築している。 緑色蛍光タンパク質(GFP)を分割した近接細胞の蛍光標識システムをマウス肝転移モデルのオミクス解析に実装した。具体的には、n末端GFP断片を肝組織細胞膜上に提示し、c末端をがん細胞から分泌することで、がん細胞が形成した肝転移コロニー周辺に存在するGFP陽性細胞を破砕した肝臓から単離し、1細胞トランスクリプトーム解析した。その結果、GFP陽性の肝細胞の中に、強い炎症応答を示す亜集団が含まれていることが明らかになった。GFP陽性肝細胞のヘテロ性は、がん細胞との相互作用の特性(分子様式・時間)によって規定されている可能性が示唆されており、蛍光タイマータンパク質を用いた近接細胞蛍光標識によってそのメカニズムの深化が期待できる。また、mCherryを鋳型にした蛍光タイマータンパク質を模倣して、mScarletに複数のアミノ酸変異を導入することで、異なる蛍光タイマー特性を示す変異体を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近接細胞蛍光標識技術を使ったマウス転移モデルの解析は順調に進展したが、分割型蛍光タイマータンパク質を用いたレポターシステムの、生体組織の細胞間相互作用の解析への実装は予定より遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
分割型蛍光タイマータンパク質を使った近接細胞蛍光標識レポーターを搭載したアデノ随伴ウィルスベクターを構築し、マウスの肝転移モデルにおける細胞間相互作用の次元拡張オミクス解析に実装する。並行して、近接細胞蛍光標識と1細胞オミクスを組み合わせた解析パイプラインより得られた肝転移病巣の細胞間相互作用の知見に基づき、肝転移微小環境の特性を生化学・分子生物学・遺伝学的な広い視点から解析する。それらを、次元拡張オミクス解析から得られた知見と統合し、肝転移を規定する細胞間相互作用の分子的理解を目指す。
|