研究課題
細胞内の液滴は、タンパク質やペプチドによって一過的に形成され、種々の生体反応の反応場として働く。近年、神経変性疾患細胞内で形成され、細胞毒となる液滴中にRNAが含まれることが明らかとなったが、液滴中のRNAの役割は不明であった。核酸は、その配列や周囲の化学環境に応じて多様な高次構造を形成する。そのため、疾患の進行に伴う細胞内の環境変化は、核酸の構造を変化させ、ペプチドとの相互作用を制御し、さらに細胞毒となる液滴(凝集体)の形成を制御している可能性がある。本研究では、細胞内環境が液滴形成に及ぼす影響を解析するため、下記の研究を遂行した。まず、細胞内のタンパク質などで込み合った分子環境が核酸構造に及ぼす影響を解析するために、細胞を用いた試験管内で活用できる細胞内分子環境評価系を開発し(特願2022-189538)、開発した評価系において核酸構造を物理化学的に解析した。液滴を形成するRNAと液滴の相互作用を解析し(Chem. Commun., 58, 12931(2022)、第16回バイオ関連化学シンポジウム(2022年)で発表)、液滴形成を促進させるには、G四重鎖の形成が重要であることを示した。さらに、G四重鎖構造に及ぼす細胞内の環境の効果についても検討した(Chem. Commun., 58, 12459 (2022))。これらの知見を基に、核酸に結合する小分子を使って液滴形成を阻害する技術を開発できた(Chem. Commun., 58, 4891 (2022),日本核酸医薬学会第7回年会(2022年)で発表)。これらの結果は、核酸の構造を決定する上での周辺の溶液環境(特に分子クラウディング)の重要性を明らかにし、核酸の構造を標的とした薬剤の分子設計に重要な知見である。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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