研究実績の概要 |
昨年度までに開発した天然物の生物活性を保持しているハイブリッド化合物を利用して、これまで検討できていなかった部分の構造活性相関研究を行った。 まず、ハイブリッド化合物に利用したスウィンホライド側鎖構造のみの誘導体を合成し、アクチンに対する親和性を検討した結果、この側鎖部誘導体はほどんどアクチン脱重合活性を示さなかった。この結果から、ハイブリッド化合物の活性度が低下した理由は、側鎖部のアクチンに対する親和性が低いためであることがわかった。強力なハイブリッド化合物を設計するためには、側鎖部のアクチンに対する親和性を高める必要がある。 また、これまで検討できていなかったN,N-ジメチルアミノ酸エステル部に関する構造活性相関を、天然物よりも容易に化学合成できるハイブリッド化合物を用いてアクチンに対する親和性を検討した。その結果、N,N-ジメチルアラニン、N,N-ジメチルフェニルアラニン、N,N-ジメチルロイシンのいずれのエステルでも、エステル化する前のアルコールよりも活性が増強することがわかった。しかしながら、アミノ酸エステル部に対する認識はかなり厳密であり、いずれのエステルでも天然型のN,N,O-トリメチルセリンエステルよりも大きく活性が低下することがわかった。これらの結果から、アミノ酸エステル部について、その存在はアクチンに対する親和性に対して重要であること、その立体障害は生物活性をかなり低下させること、またメトキシ基が活性を増強させていることがわかった。
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