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2020 年度 実績報告書

天然物の骨格と立体多様性指向型全合成戦略による次世代型天然物創薬プロセスの開拓

研究課題

研究課題/領域番号 20H02867
研究機関日本大学

研究代表者

早川 一郎  日本大学, 文理学部, 教授 (20375413)

研究分担者 照屋 俊明  琉球大学, 教育学部, 教授 (90375428)
岩月 正人  北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (70353464)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード多様性指向型全合成戦略 / 天然物創薬 / 骨代謝調節活性 / 抗マラリア活性
研究実績の概要

昨年度は骨粗鬆症薬として期待されるSB-203207の立体化学多様性指向型合成について検討し,全炭素骨格を低収率ながら構築することができた.すなわち,既に報告している中間体からオゾン分解,続くジメシル化を行ったところ,窒素部分の保護基であるBoc基の隣接基関与により,2つのメシル基を区別して環化反応が進行することを見出した.そこでこの中間体に対し,残ったメシル基をメチルアミンを作用させたところ,メチルアミノ化のみならず,さらに環化反応/開環反応が一挙に進行した.構造解析の結果,この生成物はSB-203207のアザインデン骨格を有していることが明らかになった.クロロキン耐性マラリアに有効なストリキノスアルカロイドであるイソレツリンの構造多様性指向型合成についても,低収率ながら共通する5-6員環部分を構築した.すなわち第1級ヒドロキシ基に対しノシルアミド基を光延反応で導入しようとしたところ,ノシルアミド化に続くE1cB反応/分子内アザMichael付加環化反応が一挙に進行することを見出した.現在立体化学を確認しているところである.また本研究に関連するテーマであるテルペンドールEの構造多様性指向型合成において,連続する不斉第四級炭素をHouse-Meinwald転位で構築し,転位反応で生じたカルボニル基を起点としてBarluenga-Smithインドール合成でインドール部分を導入することにより,A-E環部分を立体選択的に構築した.これに関してはX線結晶構造解析により,連続する不斉第四級炭素を含め,目的の構造を有していることを確認した.本結果に関しては現在論文投稿中である.この中間体はさまざまなインドールテルペノイドに共通する部分を有しているので,この中間体を起点とした多様性指向型合成へ展開することが期待できる.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍での研究であったが,上述のようにSB-203207についてはアザインデン骨格を低収率ながら構築することができ,ストリキノスアルカロイドの合成についても,共通する5-6員環部分を構築した.また本研究に関連する合成であるテルペンドールEの合成において,連続する不斉第四級炭素を含むA-E環部分を立体選択的に構築することができた.

今後の研究の推進方策

今年度は,1)骨粗鬆薬のリード化合物として期待できるSB-203207の立体化学多様性指向型全合成を目指し,低収率であったアザインデン骨格の構築の反応条件の最適化,2)抗マラリア活性を示すイソレツリンの構造多様性指向型合成研究と,ストリキノス骨格をベースとした天然物アナログライブラリーの構築,を行う.
1)に関しては,昨年度見出したアザインデン骨格構築の合成経路について,反応条件の最適化と環状アミンからエナミンへと酸化することにより,全合成を目指す.
2)については,イソレツリンの母核構築の5-6員環部分の合成はできたが,この環化前駆体の立体選択的合成が難航している.すなわち.前駆体は合成できたのだが,収率が低いこと,何より工程数が冗長になっており,創造性に欠けている問題がある.そこで今年度はこの前駆体の合成経路の効率化を進める.この前駆体が構築できれば代表者が開発した分子内光延反応と,続く分子内SN2反応により複素環が構築でき,イソレツリンの全合成が達成できる.一方,イソレツリンの天然物アナログライブラリーの構築を目指し,これまでに代表者によって確立したユズリミンの複素環構造の合成経路を基盤として,天然物とは異なる環化モードでインドールユニットを導入したイソレツリンアナログを合成し,抗マラリア活性を検定する.本化合物は天然物と同様の三次元構造を持つので,抗マラリア活性やその他の活性を示すことが期待できる.なお,代表者は今年度から独立した研究室の運営を開始した.まもなく実験が開始できる状況である.

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Quantitative analysis of the Tricholoma ustale-derived toxin, ustalic acid, in mushroom and food samples by LC-MS/MS2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshioka Naoki、Hayakawa Ichiro、Minatani Tomiaki、Tomozawa Junko、Akiyama Hiroyuki、Yomo Hiroto
    • 雑誌名

      Forensic Science International

      巻: 317 ページ: 110554~110554

    • DOI

      10.1016/j.forsciint.2020.110554

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Kinetic Resolution of α-Nitrolactones by Catalytic Asymmetric Hydrolysis or Ester-Amide Exchange Reaction2020

    • 著者名/発表者名
      Sakakura Akira、Nakao Ryota、Fujii Yudai、Hayakawa Ichiro、Mizoguchi Haruki
    • 雑誌名

      Synlett

      巻: 31 ページ: 2018~2022

    • DOI

      10.1055/s-0040-1707303

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Enantioselective Diels?Alder Reaction of 3-Nitrocoumarins Promoted by Chiral Organoammonium Salt Catalysts2020

    • 著者名/発表者名
      Sakakura Akira、Fujii Yudai、Nakao Ryota、Sugihara Saki、Fujita Keita、Araki Yuya、Kudoh Takayuki、Hayakawa Ichiro、Mizoguchi Haruki
    • 雑誌名

      Synlett

      巻: 31 ページ: 2013~2017

    • DOI

      10.1055/s-0040-1707302

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structure Optimization of Gatastatin for the Development of γ-Tubulin-Specific Inhibitor2020

    • 著者名/発表者名
      Shintani Kana、Ebisu Haruna、Mukaiyama Minagi、Hatanaka Taisei、Chinen Takumi、Takao Daisuke、Nagumo Yoko、Sakakura Akira、Hayakawa Ichiro、Usui Takeo
    • 雑誌名

      ACS Medicinal Chemistry Letters

      巻: 11 ページ: 1125~1129

    • DOI

      10.1021/acsmedchemlett.9b00526

    • 査読あり
  • [学会発表] 多様な立体・骨格を有する類縁体合成を指向した天然物合成戦略2021

    • 著者名/発表者名
      早川一郎
    • 学会等名
      日本農芸化学会2021年度仙台大会(オンライン開催)
    • 招待講演
  • [学会発表] シデロフォアトリペプチド コプリノフェリンの合成と生物活性2020

    • 著者名/発表者名
      礒谷智輝・早川一郎・恒松雄太・高西潤・浅井しほり・渡辺賢二・坂倉彰
    • 学会等名
      日本化学会第100春季年会(2020)
  • [学会発表] テルペンドールEの連続不斉第四級炭素の合成研究2020

    • 著者名/発表者名
      松丸直睦・早川一郎・坂倉彰
    • 学会等名
      日本化学会第100春季年会(2020)
  • [学会発表] キノコ形成促進物質coprinoferrinの担子菌における普遍性証明と生合成解明2020

    • 著者名/発表者名
      高西潤・桝谷貴洋・恒松雄太・礒谷智輝・早川一郎・坂倉彰・渡辺賢二
    • 学会等名
      日本農芸化学会2020年度大会
  • [学会発表] キノコ由来子実体形成促進分子コプリノフェリンの発見2020

    • 著者名/発表者名
      高西潤・恒松雄太・桝谷貴洋・磯谷智輝・早川一郎・坂倉彰・渡辺賢二
    • 学会等名
      第62回天然有機化合物討論会
  • [学会発表] インドールジテルペンの網羅的合成研究2020

    • 著者名/発表者名
      松丸直睦・坂倉彰・早川一郎
    • 学会等名
      第62回天然有機化合物討論会
  • [学会発表] LC-MS/MSを用いたキノコおよび食品中のカキシメジ毒性成分ウスタル酸の分析法2020

    • 著者名/発表者名
      吉岡直樹,早川一郎,南谷臣昭,友澤潤子,秋山弘之,四方浩人
    • 学会等名
      第116回日本食品衛生学会学術講演会
  • [備考] 早川研究室HPページ

    • URL

      https://hayakawa-lab.com/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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