研究実績の概要 |
本研究では、生体分子の部分構造を模倣した低分子ペプチドミメティック化合物が有する限られたケミカルスペースに隠れて広がる特徴的なアクティビティスペースを探索し、生物学および医薬品開発に有用な新規生理活性物質を見いだすことを目的としている。 これまでに我々は、αヘリックス模倣化合物ライブラリを構築しており、このライブラリスクリーニングから、ウイルス増殖阻害化合物、腫瘍細胞増殖阻害化合物、線維化阻害化合物を得た。本年度は、(3S,3aS,6R)-octahydro-5H-3,6-methanopyrrolo[3,2-b]pyridin-5-one骨格を有する狂犬病ウイルス増殖阻害活性化合物(感染細胞実験:IC50=1μM, S. Matsuoka, et al., WO2020246503)について、標的分子の同定を試みた。すなわち、活性化合物にフリーのアミノ基を導入し、これを足場にビオチンリンカーを導入し、アビジンビーズに固定化することで、狂犬病ウイルスタンパク質のプルダウンアッセイを行った。In silcoでの低分子ペプチドミメティクスとタンパク質X線結晶構造のフィッティング実験から、狂犬病Nタンパク質への結合が予想された。そこでビーズ上の狂犬病ウイルス増殖阻害化合物へのNタンパク質の結合をウエスタンブロッティングで調査したが、確認できなかった。他のウイルスタンパク質、または宿主細胞のタンパク質を阻害する可能性が示唆された。 一方、新しく設計・合成した中分子天然物ミメティックの小規模化合物ライブラリから、TGF-β刺激による細胞の線維化を阻害する新規生理活性化合物を複数取得することに成功した。
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