研究課題/領域番号 |
20H02870
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
末永 聖武 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (60273215)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海洋シアノバクテリア / 熱帯業原虫 / マラリア / 新規物質 / 鎖状ペプチド / N-メチルアミド / ペプチドーポリケチドハイブリッド化合物i |
研究実績の概要 |
海洋シアノバクテリアから、熱帯病の病原原虫に対する毒性を示す物質を探索した結果、新規物質イヘヤミドA-C、ホシノアミドCを単離し、その化学構造を決定した。さらに、イヘヤミドAのファーマコフォアと考えられる物質を新たに海洋シアノバクテリアから発見した。イヘヤミドAの全合成を達成し、合成品が天然品と同等の活性を示すこと、スペクトルデータが完全に一致することを確認した。さらに、その際の合成中間体の活性を評価し、構造活性相関を明らかにした。すなわち、isopropyl-Osmethylpyrrolinoneが活性には必須であり、ペプチド鎖が長くなるほどその活性が強くなることが分かった。 ホシノアミドCは、側鎖の立体配置を可能な2種のジアステレオマーを全合成することによって、その立体配置を決定した。合成した2種のジアステレオマーの抗寄生虫活性は同程度であった。 また、腫瘍細胞に対して非常に強い増殖阻害活性を示す新規物質イエゾシドを単離した。その特徴的な脂肪酸部の2個の不斉炭素原子の立定配置について現在構造解析を進めている。イエゾシドの作用機構解析を行い、その増殖阻害活性はカルシウムポンプ阻害によるものであることを明らかにした。 新たな新規物質を得るために、採集地を変えて海洋シアノバクテリアを採集した。今後、このシアノバクテリアから新たな抗原虫物質の発見を目指す。 一方、抗マラリア活性を示すペプチドーポリケチドハイブリッド化合物ikoamideの全合成研究を進めており、ikoamideに含まれる5つのN-メチルアミノ酸のうち、4個を含むヘキサペプチドを合成した。また、弱い抗マラリア活性を示すビセリングビアサイド類の抗マラリア活性を向上させる目的で側鎖に親水性のアミド基をもつ人工誘導体の合成を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
熱帯病の原因原虫に対して毒性を示す新規物質を複数個、海洋シアノバクテリアから発見できている。さらに腫瘍細胞に対して強力な増殖阻害活性を示し、特徴的な化学構造をもつ新規物質も発見している。概ね順調であるが、新型コロナウィルス感染拡大のため、試料採集に制約が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍細胞に対して強力な増殖阻害活性を示すイエゾシドについては、2個の不斉炭素原子の立体配置を天然物の分解反応と化学合成を組み合わせて、なるべく早く決定し、論文発表を行う。 新たな採集地で採集した海洋シアノバクテリアから面白い新規物質が得られているので、今後も新たな採集地を開拓し、ユニークな化学構造と顕著な活性をもつ新規物質の発見を目指す。 また、当研究室で単離・構造決定した、いくつかのリポペプチド類の合成研究を進めており、今年度中に全合成達成を目指す。
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