本研究では、海洋シアノバクテリアを探索限として、熱帯病治療薬のリード化合物となり得る物質を探索している。2023年度は、新規物質9種を単離構造決定した(すべて論文発表済み)。 沖縄県宮古島で採集したRivularia属海洋シアノバクテリアからは抗寄生虫活性を示すHennaminal、 Hennamideを単離構造決定した。さらにHennamideの全合成を達成し、その不安定性が自己二量化する反応性に由来することを明らかにした。 沖縄県うるま市で採集したOkeania属海洋シアノバクテリアからは、4種の16員環マクロリド配糖体Akunolides A-Dを単離構造決定した。絶対立体配置は、NMR解析とECD(実測値と計算値の比較)により決定した。Akunolidesは中程度の抗寄生虫活性を示した。また、同じシアノバクテリアから、中程度の抗寄生虫活性を示すPolycavernoside Eを単離構造決定した。 沖縄県宮古島市池間島で採集したOkeania属海洋シアノバクテリアから、2種のセンブレン型新規ジテルペン、Kagimminols A and Bを単離した。スペクトルデータの解析および計算化学で得たNMRデータおよびECDスペクトルを天然品のものと比較することによって、その絶対立体配置を決定した。Kagimminols はヒト由来細胞には細胞毒性を示さない一方、中程度の抗寄生虫活性を示した。 また、当研究室で単離構造決定した顕著な抗マラリア活性を示すリポペプチドikoamideの全合成を達成した。さらに、アセチレンを含有するリポペプチドodookeanynes A and Bの全合成を達成した。合成品はトリパノソーマ原虫に対して非常に強力な毒性を示した。さらにポリケチドの不飽和度が異なる誘導体を合成したところ、天然品を上回る抗トリパノソーマ 活性を示した。
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