研究課題/領域番号 |
20H02871
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
北岸 宏亮 同志社大学, 理工学部, 教授 (60448090)
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研究分担者 |
廣田 毅 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (50372412)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一酸化炭素 / ヘム / 概日リズム / ヘムオキシゲナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では細胞内概日リズム制御におけるヘムと一酸化炭素のクロストーク性を解明することを目的としており,2021年度にはそれを可能とする化合物群の合成と,細胞内一酸化炭素を計測するための独自のアッセイを確立して報告した。まず細胞内一酸化炭素を捕捉するためのケミカルツールhemoCDを用いたアッセイを確立した。動物体内の細胞には微量の内因性一酸化炭素(CO)が常時存在するが,それを簡便かつ正確に計測する方法はこれまでに報告されていなかった。我々は細胞内や動物組織内に含まれるCOをhemoCDを使って簡便かつ正確に計測することを試み成功した。この定量方法により,デキサメタゾンで同期化した細胞内に含まれるCOの産生には概日リズムが存在することが明らかとなった。さらに動物を用いて組織内に含まれるCOの定量方法を確立した。この手法は,内在性COのシグナル伝達物質としての機能解明に役立つだけでなく,過剰のCOを吸入した体内における毒性メカニズム解明にも役立てることができ,論文公表後にプレスリリースにより広く周知した。その結果種々の共同研究および知財としての権利化を遂行することとなった。さらに概日リズム解明のためのケミカルツールとして,細胞内でCOを効率よく放出する新規CO-releasing moleculeの開発,ヘムオキシゲナーゼによって分解されてもCOを発生しないメソメチルヘム誘導体の合成にも成功しており,次年度からの研究に貢献するケミカルツールが種々揃っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画したとおりにケミカルツールの合成を進めており,それぞれを成果として報告できている。一方でCOVID-19の影響により研究分担者との往来を控える傾向にあったために,研究分担者との連携による概日リズム現象のキャラクタリゼーションには着手できていない状況である。2022年度には感染状況に配慮しつつ我々の研究室で合成したケミカルツールを用いて概日リズム関連の有効な共同研究を遂行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の最初の目標として,昨年度までに我々の研究室で合成したhemoCD, 新規膜透過性CORM,およびメソメチルヘムなどのケミカルツールの添加がもたらす細胞内概日リズムへの影響を研究分担者である廣田氏の協力のもとに観測することである。上記の3つのケミカルツールを使用することにより,細胞内COおよびヘム濃度を自在に調節することが可能であり,これらの濃度変化が転写因子CLOCKおよびNPAS2の転写活性に与える影響についてダイレクトに可視化する。また今年度が最終年度であることから,当研究計画の最終目標であった概日リズムの自在制御についても挑戦する。すなわちヘムやCOの濃度を変えることにより,概日リズムのフェーズを人為的にシフトさせることができるかどうかの可能性を探る。またもうひとつの目標として,昨年度までに我々の研究室で合成したケミカルツールあるいは確立したアッセイについて,論文として公表する。それぞれの成果について新規性のあるものについてはすでに特許出願により権利化しており,これらをさらに成果として社会に還元するためにも公知の事実として公表するとともに関連企業との共同研究の展開にも注力することが最終年度における到達目標である。
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