本研究では、①がん表面の抗原に結合して迅速かつ大きなactivationを示す蛍光プローブの開発 ② bioorthogonalな蛍光プローブとレポーター酵素のペアを利用した、新規がん蛍光イメージング法の開発、の大きく二課題に取り組んでいる。 ①に関して、昨年度までに、我々はモデル抗原であるGFPや、がん表面抗原として知られるEpCAMに結合するだけで、それぞれ、16倍、7倍の蛍光上昇を示すプローブを開発することに成功していた。本年度は、プローブの調製法の最適化を行った結果、プローブを適切な還元剤で前処理することによって、抗原結合に伴う蛍光上昇を、それぞれ25倍、12倍まで上昇させることができることを見出した。さらに改良したプローブを用いることで、EpCAM高発現がん細胞である、Capan-1細胞(すい臓がん由来)や、Caco-2細胞(結腸がん由来)細胞を洗浄なしで鮮明に可視化できることを見出した。In vivoでのイメージングや臨床検体への応用なども視野に入っている。 ②に関して、昨年度までに我々はD-Fucoseを有する蛍光団と、メタゲノム由来のグリコシダーゼTd2F2をbioorthogonalなプローブ・酵素ペアとして確立し、さらにTd2F2を指向性進化によって改変することで、活性が大幅に上昇した変異体や、酸性環境で活性が顕著に上昇する変異体を取得することに成功していた。本年度は、in vivo担がんマウスモデルにおいて、がん表面抗原に対する抗体とTd2F2 変異体の複合体、およびD-Fucoseを有する蛍光プローブの併用によって、がんを低バックグラウンドで明るく可視化することに成功した。また、抗体とTd2F2の複合体の不均一性を回避するため、nanobodyとのTd2F2の複合体の発現精製プロトコルなども確立し、これをイメージングに用いることができることも示した。
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