研究課題/領域番号 |
20H02877
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
清中 茂樹 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (90422980)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケモジェネティクス / GPCR / アデノシン受容体 / ヒスタミン受容体 |
研究実績の概要 |
本研究では、標的とする受容体サブタイプに対して、受容体本来の機能を損なうことなく、デザインした化合物による人為的な制御能を付与した新たなケモジェネティクス法を開発することを目的としている。 これまでの研究期間で、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)であるアデノシン受容体(A2A受容体)を標的として、ケモジェネティクス可能な変異体と人工リガンドペアを見出した。特に昨年度は、A2A受容体選択的な拮抗剤であるZM241385類似体として設計した人工リガンドに対する親和性を向上させることができるA2A受容体変異体を得ることに成功した。本年度は、蛍光カルシウムイメージングおよびA2A受容体に対する細胞表層での結合実験から、人工リガンドに対する詳細な作用メカニズムを探索した。その結果、我々が設計したA2A受容体変異体においては、人工リガンドの解離速度を遅らせることで、阻害作用を強めるという機構を明らかにした。 さらに本年度は、適用できる受容体の拡張も進めた。具体的には、A2A受容体と同じclass Aに属するヒスタミン受容体(H1受容体)に対するケモジェネティクスを進めた。A2A受容体の場合と同様に、HEK293細胞を用いたH1受容体の機能評価系を確立した後に、複数のH1受容体変異体を作成し、リガンド結合部位近傍でありながら、ヒスタミン親和性を落とさない変位導入箇所を探索した。人工リガンドに関しては、H1受容体に対して高い親和性と選択性を有するレボセチリジンに着目した。共結晶構造は報告されていないが、類似リガンド(ドキセピン)との共結晶に基づく計算結果が知られているので、その構造データを元に人工リガンドを設計した。実際に、ヒスタミンの親和性を維持しながら、人工リガンドの親和性を変えることができる受容体およびリガンドペアを見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画した通り、順調に研究を進めることができた。また、関連するケモジェネティクス研究の論文が受理され、またケモジェネティクスに関する総説も受理された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果で得られ特許取得まで行った研究業績に関して、論文化に向けたデータ取得を行っていく。特に、A2A受容体のケモジェネティクスの研究成果に関しては、次年度中に論文としてまとめる予定である。また、他の受容体への適用拡大は引き続き進める。
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