研究課題/領域番号 |
20H02886
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
一家 崇志 静岡大学, 農学部, 准教授 (90580647)
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研究分担者 |
廣野 祐平 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, グループ長補佐 (10391418)
森田 明雄 静岡大学, その他部局等, 理事 (20324337)
川木 純平 静岡県農林技術研究所, 静岡県農林技術研究所, 主任研究員 (60881539)
古川 一実 沼津工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90353151)
山下 寛人 静岡大学, 農学部, 助教 (70915488)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | チャ / アルミニウム / ddRAD-seq / GWAS / 遺伝資源 |
研究実績の概要 |
低アルミニウム (Al) 含有茶の栽培法と育種を達成するため,チャ遺伝資源を用いた統計遺伝学的手法による低Alに関連する原因因子の特定を試みた.昨年度までに,チャ遺伝資源のゲノムワイド多型情報の整備と茶葉中のAl含量のバリエーション評価を進めた.これら遺伝情報と表現型情報を用いたゲノミック予測 (GP) やGWASにより,茶葉中のAl含量を制御する遺伝要因が推定された.また,GPモデルを活用した育種価推定により,ゲノム情報のみで遺伝資源群から低Al含量の育種母本を探索できる仕組みを整備した.高密度多型情報を用いたアソシエーション解析による鍵遺伝子変異同定を行うため,Al含量が異なるチャ20品種の全ゲノム情報を取得した.現在,情報解析を進めており,Al輸送関連やキレート化合物代謝に関わる遺伝子群の変異とAl含量の関連を評価する予定である.Al含量の系統間差異を説明する生理的要因の一つとして,細胞壁成分との関連を見出した.チャの根および葉において,Alの多くは細胞壁に集積しており,特にヘミセルロース画分に局在集積していることが示された.系統間におけるAl含量と細胞壁/ヘミセルロース含量の間には正の相関傾向が観察された.つまり,細胞壁におけるAlの結合キャパシティが,チャ系統間におけるAl含量の律速因子である可能性が示唆された. チャの遺伝子機能解析ツールとしてのゲノム編集技術のうち,パーティクルガンでゲノム編集法ベクターを打ち込んだのちに選抜対象となる二次胚の誘導方法を確立できた.またRNA-Seqにより,パーティクルガンで打ち込む対象である不定胚の増殖や二次胚誘導のためにはホルモン添加培養からホルモンフリーに移植して遅くとも10日までに要因となる因子が機能していることがわかり,効率的な不定胚増殖について知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チャのAl含量を制御する遺伝要因同定に向けた遺伝情報と表現型情報が揃い,鍵遺伝子変異同定に向けたゲノム解析が進んでいる.高密度多型情報とAl含量データのアソシエーション解析により,鍵変異の同定を見込んでいる.Al含量の系統間差異を説明する生理的要因の一つとして,細胞壁成分との関連も見出すことができた.また,低Al含量のための育種母本選抜とゲノム育種システムを構築し,実際のチャ育種へ活用できる体制が整った.チャの遺伝子機能解析ツールに向けたゲノム編集基盤においても,パーティクルガンと二次胚形成による手法を確立しつつある.以上のことより,全体的には概ね順調に進捗していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
以下の項目について焦点を当て,研究を推進していく. ①チャ遺伝資源のゲノム情報整備とAl定量試験 研究分担者川木が所属する静岡県茶業研究センター内で栽培されている約3000のチャ遺伝資源を対象にddRAD-seq解析によるゲノム情報を整備した.GPモデルとこれら遺伝資源のゲノム情報を用いた育種価推定により,低Al育種に活用可能な育種母本を推定した.研究代表者と分担者の山下・川木が,遺伝資源と育種母本候補のデータベース化を進め,ゲノム育種システムを構築する.これら育種母本候補の成葉・新芽中ならびに土壌中のAl含量を,分担者の森田・廣野が評価することで,有用母本の選抜を進める. ②GWAS・GPによる低Alに関する遺伝要因の解明 RAD-seqによる多型情報に基づいたGWASでは,原因遺伝領域の検出力が劣ったため,全ゲノム解析による高密度多型情報を用いたアソシエーション解析により,Al含量を制御する遺伝子変異の同定を試みる.コストの都合上,集団サイズが限定されるため (約20品種), まずはAl輸送関連やキレート化合物代謝に関わる遺伝子群に対象を絞り,遺伝子変異・遺伝子発現量とAl含量の関連を評価する予定である.必要に応じて,解析系統数の拡充やゲノムワイドな解析に発展させ,順遺伝学的手法により,鍵遺伝子の同定を目指す.
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