研究実施計画に記載した①窒素飢餓応答制御に関わる新奇因子の探索(変異体スクリーニングとYeast one-hybridスクリーニング)と②新奇・既知因子の役割と因子間の遺伝的関係の明確化によるシステム理解の研究を推進した。
①変異体のスクリーニングにおいては、窒素飢餓応答抑圧変異体(snsr)の探索と解析を中心に行った。窒素飢餓応答レポーターを指標にした一次スクリーニング、根における内生の窒素飢餓応答性遺伝子の発現を指標にした二次スクリーニングを経て、16系統に絞り込んだ。これらについて形態的および分子レベルでの表現型解析を行い、多くが側根形成に異常を示すことを明らかにした。いくつかの有望な変異体については、ゲノムリシークエンスによる原因遺伝子同定を進めている。Yeast One-hybridスクリーニングで同定したNIP1とNIP2については、T-DNA挿入変異体とゲノム編集によるフレームシフト変異体を確立し解析したが、明確な表現型は観察されなかった。NIP1とNIP2は相同遺伝子あり、機能重複が考えられるため、交配による二重変異体の作出を行った。また過剰発現体の作出も行った。これら系統の確立が完了し次第、窒素飢餓応答関連表現型の詳細な解析を行う予定である。
②窒素飢餓応答制御に関わるとされる既知因子NIGT1.1-1.4、LBD37-39、CEPDs、TGA1/4、NLA、PHO2、CBL7、BTB1/2について、変異体や過剰発現体の解析を行った。その結果LBD37-39が、これまで考えられてきたよりも重要な役割を果たしていることが明らかになった。そこでLBD37-39の変異体と他の既知因子の変異体を掛け合わせた多重変異体を作出・解析した結果、これまでに明らかになっていない、これら因子の役割分担や遺伝的上下関係を見出した。
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