研究課題/領域番号 |
20H02891
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
樋口 恭子 東京農業大学, 応用生物科学部, 教授 (60339091)
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研究分担者 |
齋藤 彰宏 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (10610355)
酒井 卓郎 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (70370400)
栗田 圭輔 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究職 (10757925)
鈴井 伸郎 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員(定常) (20391287)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光化学系 / 鉄 / オオムギ / QTL / ライブイメージング |
研究実績の概要 |
光合成鉄利用効率(PIUE)を提案する論文が受理・発刊された(Saito et al. Plants 2021, 10(2), 234)。 ライブオートラジオグラフィーを用いた59Feの葉への流入速度の品種間比較から、光合成鉄利用効率(PIUE)の高低と希薄なFeの能動的な取り込み能力の間には相関がない、すなわち高いPIUE実現のためには葉が鉄を獲得する能力よりも光化学系の順応が重要であることが明確になった。また、光化学系I反応中心のタンパク質量や、光化学系IにFe-Sクラスターを挿入する能力も、高いPIUEとは相関がないことが明らかになった。 鉄欠乏時にLhcb1をリン酸化し、光エネルギーの熱放散を誘導するという応答は、品種によらずオオムギに普遍的な鉄欠乏順応機構であることが明らかになった。この応答に重要であると予想されるオオムギ特有のHvLhcb1.12を導入したイネでは、非形質転換イネに比べてより高いNPQを誘導することが明らかになった。 チラコイド膜を沈殿させるのに必要な遠心力の違いから、鉄欠乏時には比重の軽い、すなわちタンパク質複合体が十分に集積していないと思われるチラコイド膜の割合が増加すること、また鉄十分時でも品種により比重の軽いチラコイド膜の割合が異なることが分かった。 QTL解析のための親品種の掛け合わせと後代の種子の取得が完了した。また、QTL解析のためのハイスループットなPIUE評価手順を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
59Feの価格が高騰したため予定の実験規模を縮小したが、必要最小限の実験は順調に遂行でき、論文化に必要なデータを取り終えた。 QTL解析の準備は順調に進行している。 2020年度の前半は研究室への入室が制限されていたため、チラコイド膜分画と分画試料の解析を予定通りには進められなかったが、チラコイド膜タンパク質の組成について予想外の品種間差があることが明らかになったため、さらに新規な知見が得られると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
鉄流入速度と鉄欠乏適応の関係について論文投稿を行う予定である。 鉄や光化学系タンパク質の蓄積量そのものと高いPIUEの間には明瞭な相関がないことから、光化学系タンパク質の会合状態と電子伝達に高いPIUEを実現する鍵があると考えられる。チラコイド膜の分画結果が品種間で異なっていたことも、この予想を支持する。そこで光化学系タンパク質複合体の組成の品種間差を重点的に調べる。 アンテナタンパク質Lhcb1のリン酸化部位を特定するとともに、オオムギの特殊なhcb1の機能を解析するための新たな形質転換体の作成を行う。 QTL解析集団のPIUEの評価を進める。
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