研究実績の概要 |
今年度は長日条件下において、窒素条件の違いが開花期にどのように影響するかのメカニズムの解明を目指して、変異体やゲノム編集個体を用いた栽培試験を行った。その結果、長日条件下では既知の開花関連遺伝子である、Hd3a, Ehd1, RFT1は、低窒素条件における開花促進に寄与していないことが明らかになった。また、長日条件下での開花関連遺伝子の発現解析結果からも、Hd3a, Ehd1, RFT1は窒素条件の違いによる発現変化が顕著ではなかった。一方でHd3a, RFT1の上流で機能する開花関連遺伝子Hd1は、その変異体を用いた解析から、低窒素条件における開花促進に関わっていることが示唆された。以上の結果から、開花関連遺伝子Hd3a, Ehd1, RFT1ではなく、さらに下流の遺伝子が低窒素条件下での開花促進機構に関与していることが予想された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既知の開花関連遺伝子が低窒素条件における開花促進に関与しているかを明らかにするため、長日条件下で培養土中の窒素濃度を変化させ、既知の開花関連遺伝子の機能欠損体を栽培し、低窒素条件下での開花の促進度合いを調査した。その結果、Hd3a, Ehd1, RFT1の機能欠損体は、野生型であるコシヒカリと同様に、低窒素条件で1週間程度の早咲きを示した。そのため、低窒素条件による開花促進には寄与していないことが示唆された。長日条件下で窒素条件を変化させた栽培試験で、幼植物を用いた発現解析を行ったところ、低窒素条件でのHd3a, Ehd1, RFT1の発現誘導は顕著ではなかったことからも、前述の仮説が支持された。一方でHd3a, Ehd1, RFT1の上位で機能するHd1の変異体は、野生型である日本晴と比較して、低窒素条件での開花促進が顕著ではなかった。以上のように既知の開花関連遺伝子のなかで、長日条件での低窒素による開花促進に機能しているものを明らかにした。
|