・Strep-tagIIタグ発現株を用いた人工腸内細菌叢からの回収方法の検討 昨年度までの評価で最も効率よくBifidobacterium longum 105-A株を回収できることが明らかになったStrep-tagIIタグ発現株について,複数の代表的な腸内細菌種からなる人工腸内細菌叢からの回収を検討した.タグ発現株およびヒト腸内細菌叢の優占種である7種の細菌種(Bacteroidetes門3種,Firmicutes門2種,Actinobacteria門2種)をそれぞれ培養し,同一ODとなるように混合して人工腸内細菌叢を作成した.ここからStrep-tactin結合ビーズを用いてタグ発現株の回収を行った.B. longum特異的プローブを用いてFISH法によりタグ発現株を検出し,回収前後のタグ発現株の菌数を比較して回収率を評価した.その結果,25%の回収率,90%以上の純度でタグ発現株を回収できたことから,他の腸内細菌存在下でもタグ発現105-A株の回収が可能であることが明らかになった. 上記の結果の再現性を検証する段階で,タグ発現株が回収できなくなるという問題が発生した.タグ融合タンパク質の細胞内での発現は確認できたこと,105-A株は細胞表層に多糖の層を形成することから,細胞表層へのタグの提示の問題または提示されたタグが多糖の層に埋もれ,磁気ビーズとの結合が妨げられていることが原因と推察された.この問題を回避するため,表層提示に用いたタンパク質GltAとタグの間にさらに他のタンパク質を融合させた組換えタンパク質を発現するプラスミドを構築し,多糖の層を越えてタグを表層提示できる菌株を構築することにより,安定した選択的な回収方法の確立を進めている.
|