研究課題/領域番号 |
20H02895
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 敬悦 東北大学, 農学研究科, 教授 (50312624)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 界面活性タンパク質 / 自己組織化 / 糸状菌 |
研究実績の概要 |
本年度は、α-1,3-glucan(AG)およびGalactosaminogalactan(GAG)の合成関連遺伝子破壊・高発現株の作成と各株からのAG, GAGの精製、その分子量・電荷量(GAG)の決定を行った。併せて、粒子にAGやGAGを結合させて接着能評価を行う解析系の確立を試みた。具体的には以下の1)~3)を実施した。 1)AG合成関連遺伝子改変株のAG分子量の決定と各株の菌糸接着能を測定する。(阿部,吉見[研究支援者])~これまでの研究でA. nidulansAG合成酵素遺伝子agsBとクラスターを成す細胞内アミラーゼ遺伝子amyGの破壊株ではAGの分子量が低下することを見出している。麹菌には細胞内アミラーゼ遺伝子がamyGとamyHの2種が存在し、二重破壊によってAG量の低下と菌糸分散が観察された。同様にA. nidulans agsBに隣接するGPIアンカー型アミラーゼ遺伝子amyDの破壊株、高発現株を作成しAG分子量の計測を実施中である。また麹菌におけるAmyDホモログのAgtAをピキア酵母で発現精製する系を確立し、AgtAの精製と酵素学的解析を開始した。 2)GAG合成関連遺伝子改変株のGAG分子量・電荷量の決定と各株の菌糸接着能を測定する。(阿部、吉見[研究支援者])~本年度はテーマ担当学生の病欠のため本課題の実施が出来なかった。 3) 粒子を用いたAGおよびGAGの糖鎖相互作用解析手法の開発 (阿部) AG被覆粒子を作製するために、基材粒子のラテックス及びシリカ基材の粒子の選択を実施した。結果としてシリカ粒子を選択し、シリカ表面をシランカップリング剤で疎水化する条件の検討を進めた。GAGに関しては粒子作製用のGAGの精製を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1)AG合成機構に関する解析は、AG合成関連遺伝子の高発現変異体、遺伝子破壊株のAG分子量解析、菌糸先着解析を中心に順調に進展している。A.nidulans AG合成酵素遺伝子agsBとクラスターを成すGPIアンカー型のα-アミラーゼAmyD遺伝子amyD及びそのオルソログである麹菌agtAの遺伝学的解析や酵素学的解析を開始している。また同様にagsBとクラスターを成す、細胞内アミラーゼ遺伝子に関しては、麹菌にamyG, amyHの2種の遺伝子を見出し、遺伝学的解析が進んでいる。 2)精製AGおよびGAGを被覆した粒子による糖鎖相互作用の研究に関しては、AG被覆粒子用基材の探索とその表面加工の反応条件探索を進めた。一方で、担当学生の病欠のためにGAG粒子の製作は遅れており、GAGの精製にとどまった。 3)A. nidulans細胞破砕液から超遠心分離した細胞膜画分を用いてAG生合成のin vitro解析系の構築を試みている。多数の反応条件を検討したが、いまだ有意な活性が検出されていない。
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今後の研究の推進方策 |
1)AG合成関連遺伝子改変株のAG分子量の決定と各株の菌糸接着能を測定する。(阿部,吉見[研究支援者])~A. nidulansのAgtA/AmyD変異体を用いたAG分子量解析によるAG分子量制御機構の解析を行う。さらにAgsB/AgsAの点変異体及びキメラ変異体を用いたAG分子量解析によるAG合成機構の解析を行う。AgtAに関しては酵素学的解析も行う。これらの結果を統合して、AG合成機構と菌糸接着の関係を統合的に理解する。 2)AG合成関連遺伝子改変株から精製したAGを結合した微粒子を作製し、その粒子を用いたAG糖鎖間、AG-GAG糖鎖間の相互作用を定量化する。(阿部)~AG被覆粒子用の粒子基材とその表面加工法を早期に決定する。その後、分子量の異なるAGで被覆した粒子を用いて、粒子凝集を定量化し、AG分子量とAG糖鎖、AG-GAG糖鎖の相互作用の関係を明らかにする。 3)GAG合成関連遺伝子改変株から精製したGAGを結合した微粒子を作製し、その微粒子を用いてGAG糖鎖間、GAG-AG糖鎖間の相互作用を定量化する。(阿部)~分子量・電荷の異なるGAGをイオン交換粒子に吸着させて、GAG被覆粒子の凝集及びGAG被覆粒子とAG被覆粒子の凝集を定量化する。その結果から、GAG分子量・電荷と糖鎖間の相互作用の関係を明らかにする。
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