研究課題/領域番号 |
20H02896
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
天知 誠吾 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (80323393)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ヨウ素 / ヨウ素酸呼吸 / 放射性ヨウ素 / Pseudomonas / ヘムタンパク |
研究実績の概要 |
①Pseudomonas sp. SCT株における新規ジヘムタンパクIdrCとIdrDの機能を予測するため、ヨウ素酸呼吸菌体から調製した粗酵素を用いてcytochrome c peroxidase活性の測定を試みた。しかしながら、ウマ心臓シトクロムやABTS、オルトジアニシジンを電子供与体とした活性は確認されなかったため、予測とは違った機能を持つ可能性も含めて検討する必要性が明らかになった。②広宿主域プラスミドにidrA遺伝子をクローニングし、大腸菌に形質転換することに成功したため、ΔidrA変異株に導入し、ヨウ素酸呼吸能を相補するための準備が整った。③SCT株のペリプラズム画分を硫安沈殿処理することなどにより、かなり純度の高いIdrタンパクを取得できることがわかった。これを足がかりとして今後Idrの完全精製を試みる。④陸圏細菌Azoarcus sp. DN11をヨウ素酸呼吸条件で培養することに成功し、その酵素をLC-MS/MS解析により同定したところ、IdrA, C, Dが繰り返し検出された。また、DN11株と銀担持ゼオライトを組み合わせることにより、ヨウ素酸イオンを固体のAgIとして液相中から除去・回収できることが明らかになった。これにより、地下水中の放射性ヨウ素の除去にヨウ素酸呼吸細菌が応用できることが示唆された。⑤ゲノム中にidr遺伝子クラスターを有する3種類の好気性海洋細菌に、ヨウ素酸還元能があることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IdrCとIdrDの機能解析は思うように進展していないが、Azoarcus sp. DN11を用いたヨウ素の除去・回収実験は予想以上に進展した。変異株の取得や相補実験なども予定通り進展していることから、全体としておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
①ΔidrA、ΔidrC、ΔidrD変異株に関して、それぞれ相補株を作成し、ヨウ素酸呼吸能が復帰することを確認する。②ΔidrA変異株を用いた転写解析により、idr遺伝子群が転写誘導されるヨウ素酸(あるいはヨウ化物)濃度を明らかにする。③ΔidrC、ΔidrD変異株をヨウ素酸を添加した脱窒条件で培養し、洗浄菌体を調製する。これらをヨウ素酸と混合した際にどのような中間体(過酸化水素あるいは次亜ヨウ素酸)が生成するか、確認する。④各種クロマトグラフィを用いてIdrの完全精製を試みる。同時にIdrCとIdrDの精製手段も検討する。⑤Azoarcus sp. DN11によるヨウ素の除去・回収実験を、環境レベルの極低濃度のヨウ素酸存在下で実施する。⑥好気性海洋細菌のヨウ素酸還元酵素を、LC-MS/MS解析により同定する。
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