研究課題/領域番号 |
20H02899
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
邊見 久 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (60302189)
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研究分担者 |
海野 英昭 長崎大学, 工学研究科, 准教授 (10452872)
伊藤 智和 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90584970)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メバロン酸経路 / 古細菌 / イソプレノイド / 大腸菌 |
研究実績の概要 |
ATP消費量の少ない「低エネルギー負荷型」の代謝経路である古細菌型メバロン酸経路の大腸菌への導入により、イソプレノイド生産のモデルとして用いた揮発性セスキテルペンの生産性を向上させることに成功した。特にメバロン酸経路の一部酵素のプロモーターを強力なものに変更することにより、ファルネセン生産量を数倍に向上させることができた。 古細菌型メバロン酸経路に特異的に含まれる酵素について、酵素学的研究を進めるため、共同研究により有機合成したtrans-アンヒドロメバロン酸を用いた新たな酵素活性測定法を確立した。同化合物はホスホメバロン酸脱水酵素(PMDh)の生成物であり、かつホスホアンヒドロメバロン酸脱炭酸酵素(AMPD)の基質である。PMDhとAMPDをそれぞれ他酵素と組み合わせたカップリング反応の進行を比色定量することで、各酵素の速度論的解析を可能とした。 AMPDについては、プレニル化FMNという補酵素を要求することが既にわかっている。この補酵素を生合成するプレニル化FMN合成酵素(PFS)とAMPDの間に相互作用が存在することを明らかにした。ただし相互作用によって補酵素の受け渡し、すなわちAMPDのホロ化が進んでいるというデータは得られておらず、その生理的な意義は不透明である。 クライオ電子顕微鏡による古細菌由来プレニル基転移酵素の構造解析を目的としてサンプル調製を進めた。良質なグリッドを作製することはできたが、観察されるタンパク質の向きに偏りがあったため、最終的な構造解析には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファルネセン高生産大腸菌株の構築において、予想しなかったトラブルが発生したため、その解決と新たな生産株の構築に時間を要し、結果として研究期間を2022年度途中まで延長することとなった。しかし解決策(具体的には宿主の再選定)を見出してからは延長期間を含めて研究を順調に進めることができたため、進捗状況としてはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
ファルネセン高生産大腸菌株の構築において、一部大腸菌株の生育が極端に悪化し、ファルネセン生産が検出が難しくなるといった現象が観察された。おそらくプロモーターが誘導前に活性化され、前培養の段階で酵素発現が進み、それによる大腸菌株の生育阻害が起きていることが予想された。そこで、プロモーターの漏れを減らすために、インヒビターを保有する大腸菌株に宿主を変更することとした。研究期間を延長して研究を進めた結果、この予想は正しく、宿主の変更により安定した実験結果がえられるようになった。今後はそれらの大腸菌株を使ってファルネセン生産を検証する。
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