研究課題
イソプレノイドは自然界最大の天然化合物群であり、その中には膨大な数の有用物質が含まれる。これまでに、微生物による有用イソプレノイ ドの発酵生産を高効率化する目的で、その前駆体供給経路であるメバロン酸経路を使った代謝工学的な試みがなされてきた。しかし、微生物に対するそれらの代謝経路のエネルギー負荷は大きく、生産量の向上には限界があった。そこで本研究では、申請者らが古細菌から見出した、ATP消費量の少ない「低エネルギー負荷型」の代謝経路である古細菌型メバロン酸経路を大腸菌に導入し、イソプレノイド生産のシャーシ(土台)として広範な目的に利用可能な微生物株の作製を目指した。揮発性セスキテルペンであるファルネセンの合成経路を大腸菌に組み込んでイソプレノイド生産微生物のモデルとし、そこに古細菌型メバロン酸経路と、比較対象として過去に実績のある真核生物型メバロン酸経路を導入した。プロモーターの導入など、複数段階の改善作業を行った結果、古細菌型経路の導入によるファルネセン生産の大幅な向上が達成できた。特に、ファルネセンを捕集するために有機溶媒を重層した、酸素供給が不十分な培養条件において、古細菌型経路が真核生物型経路と同等の効果を発揮したことは重要な発見であった。また、古細菌型メバロン酸経路に特異的に含まれる複数の酵素について研究を進めた。特にホスホメバロン酸脱水酵素(PMDh)については、活性部位における4Fe-4S型鉄硫黄クラスターの存在を証明し、酸素による同クラスターの分解が、PMDh、ひいては古細菌型メバロン酸経路の酸素感受性の原因となっていることを明らかにした。また、同経路で必要とされるプレニル化FMNという補酵素について、その生合成に関わる酵素を明らかにし、それらの酵素学的な解析を行うなど、古細菌型メバロン酸経路に関する理解を深めることに成功した。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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