研究課題/領域番号 |
20H02900
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
井沢 真吾 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (10273517)
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研究分担者 |
赤尾 健 独立行政法人酒類総合研究所, 研究部門, 部門長 (50416426)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | yeast / sever ethanol stress / translation repression / protein quality control / brewing process / aggregase / disaggregase / INQ |
研究実績の概要 |
高濃度エタノールストレスによる翻訳抑制下でも優先的・選択的に翻訳される出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの遺伝子の探索を行い、複数の遺伝子を新たに同定した。そのうち、ミトコンドリアで機能する遺伝子産物についての機能解析を新たに行い、当該遺伝子の欠損株が示す高濃度エタノールストレスへの応答が野生株と異なることなどを新たに確認した。また、以前同定したBTN2が高濃度エタノールストレス下で優先的に翻訳される生理的意義についても解析をおこなった。BTN2は変性タンパク質を凝集・隔離するaggregaseをコードしており、ストレス下におけるプロテオスタシスやタンパク質品質管理(PQC)に寄与している。BTN2および関連因子の機能解析を通じ、高濃度エタノールストレス下での酵母細胞の生き残りには、PQC能を高め変性タンパク質の毒性を抑制することが不可欠であることを明らかにした。また、エタノール濃度が徐々に上昇する酒類醸造過程についても、クラフトビール、ワイン、清酒醸造過程で酵母のPQC能やプロテオスタシスの解析を行なった。ワイン酵母EC1118株およびOC-2株と、ワインを模した人工果汁培地を使ったワイン発酵試験では、PQC関連因子の発現パターンや細胞内局在を解析するとともに、各種遺伝子欠損株の醸造特性、不溶性タンパク質レベルやユビキチン化タンパク質レベルの測定などを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響で十分な実験量を確保できなかったにもかかわらず、翻訳抑制下でも優先的・選択的に翻訳される遺伝子を新たに複数同定することに成功した。また、ワイン、清酒、クラフトビールについて地元酒造メーカーとの共同研究を通じて詳細な解析を進めることができた。その結果、急激なエタノール濃度の上昇によって引き起こされるストレス応答と、酒類醸造過程のようにエタノール濃度が徐々に上昇することによって誘導されるストレス応答では、同じエタノール濃度であっても異なる点が数多く確認された。
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今後の研究の推進方策 |
ミトコンドリアにおける高濃度エタノールストレスへの適応応答について、PQC能の向上やプロテオスタシスの維持に関する分子機構の全容解明に取り組む。また、優先的に翻訳され発現量が著しく上昇したBtn2タンパク質が、エタノールストレスへの適応後、あるいはストレスからの回復過程で、速やかに分解・消失するメカニズムについても解析を進める。さらに、ワインをはじめとして、酒類醸造過程の最終段階で優先的に翻訳される遺伝子を同定・解析し、実験室条件との違いを明らかにするとともに、醸造過程の酵母の生理について新たな知見の集積を目指す。
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