研究課題/領域番号 |
20H02901
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
秀瀬 涼太 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 特命准教授 (90610866)
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研究分担者 |
鴫 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (20392623)
大平 高之 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (90727520)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ユビキチン様タンパク質 / 硫黄転移 / 好熱性アーキア / tRNA硫黄化 / 翻訳後修飾 |
研究実績の概要 |
超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisはユビキチン様タンパク質(TK1065, TK1093, TK2118)を持つ。ユビキチン様タンパク質は、モリブドプテリンやtRNA硫黄修飾(5-メチル-2-チオウリジン)など含硫化合物生合成の硫黄転移に重要である。2020年度は、T. kodakarensisのtRNA硫黄修飾塩基の網羅的解析およびユビキチン様タンパク質による翻訳後修飾の解析を重点的に行った。 まず、T. kodakarensis細胞よりtRNA画分を抽出し、LC-MS/MS解析に供した。この結果、4-チオウリジン、2-メチルチオ-N6-トレオニルカルバモイルアデノシン、2-チオシチジンなどの硫黄修飾塩基を見出した。ユビキチン様タンパク質を持たない遺伝子欠損株の硫黄修飾塩基への硫黄化修飾率は、生育環境中の元素硫黄の存在の有無に関わらず、野生株と比べて同等であった。このことから、T. kodakarensisで見出したこれらtRNA硫黄修飾塩基の硫黄化には、ユビキチン様タンパク質は関与しないことが明らかとなった。 T. kodakarensisで、ユビキチン様タンパク質によるタンパク質の翻訳後修飾の有無を調べるため、TK1065, TK1093, TK2118のそれぞれに特異的なポリクローナル抗体を作成した。T. kodakarensis細胞抽出液を使ってウェスタンブロット解析を行った。この結果、TK1065, TK1093, TK2118のそれぞれで翻訳後修飾を検出した(ウェスタンブロット法では、ユビキチン様タンパク質の分子質量の上部にラダーとして検出される)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T. kodakarensisのtRNA硫黄修飾塩基の網羅的解析については、未知の硫黄修飾塩基の同定と硫黄化修飾におけるユビキチン様タンパク質の依存性の調査を行い、計画以上の進展があった。また、ユビキチン様タンパク質による翻訳後修飾の解析については、その関与が認められた。総合的には「おおむね順調に進展している」と評価することが妥当と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
T. kodakarensis細胞を硫黄の安定同位体(34S)を含む培地で培養し、34Sで標識されたモリブドプテリンやtRNAチオヌクレオチドをLC-MS/MSで解析する。tRNA硫黄化修飾では、54位に見られる5-メチル-2-チオウリジン修飾を中心に解析する。元素硫黄の転移に関わるタンパク質の探索を行う。硫黄転移に関わるタンパク質候補をデータベースのアミノ酸配列情報より計算科学的に選定する。選定した候補遺伝子の破壊によるtRNAチオヌクレオシド量の変動をLC-MS/MSで解析し、tRNA硫黄化修飾に関与する硫黄転移酵素を特定する。一方、モリブドプテリン生合成に関してはモリブドプテリン含有酵素(アルデヒド:フェレドキシン酸化還元酵素など)活性を嫌気チャンバー内で測定することで間接的にその生合成への影響を調べる。
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