研究課題
酢酸菌は,細胞表層に特徴的な物質酸化系を持ち,酢酸発酵やビタミンC生産におけるソルボース発酵などに利用されてきた。その細胞表層とは,細胞の外とも内とも説明しづらいペリプラズム空間と呼ばれる細胞内区画である。細胞質での代謝に比べると,ペリプラズム空間での代謝は,細胞質への取り込みや細胞質からの排出に関わる時間とエネルギーの抑制が見込まれる。結果として,高速の物質変換が可能になると期待される。ペリプラズム空間での代謝には,細胞質での代謝に比べて他にも有利な点をあげることができるが,今年度はこの高速物質変換を拡張することを試みた。ペリプラズム空間での代謝が特徴的な酢酸菌で,代謝経路の拡張を試みた。同時に,タンパク質の細胞内局在を解析する手法を検討する準備を進めた。ただし,後者に関しては特筆できる解析には至らなかった。これまでペリプラズムへの局在変化を試みてきたのはリアーゼに分類される酵素のみであった。ペリプラズムへの局在変化は,原理的には多くの酵素に適応可能であると考え,今年度は異性化酵素の局在変化と反応速度上昇を試みた。マンノースイソメラーゼ(MI)は,マンノースとフルクトースの異性化を触媒する。酢酸菌由来の本酵素は至適pHが弱酸性領域にあり,酸性下でも良好に触媒する細胞質酵素である。MIにSecシグナル配列とTATシグナル配列を融合した融合遺伝子をそれぞれ作製し,酢酸菌のペリプラズム空間での発現を試みた。特にTATシグナル配列を付加したものが良好であった。生細胞を用いた異性化実験や酢酸菌が天然に持つ糖質酸化系と組み合わせた新規物質生産を試みた。TATシグナル配列を付加したもののみが,生細胞を用いた異性化反応を示したため,MIがペリプラズムへ局在変化したと考察した。今後,別のアプローチで局在変化を確認することで,酵素の細胞内局在改変の,代謝工学における優位性を示す。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (5件) 備考 (2件)
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