研究課題/領域番号 |
20H02914
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
加藤 公児 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任准教授 (30452428)
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研究分担者 |
長尾 遼 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任講師 (30633961)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体超分子複合体 / 光化学系タンパク質 / 構造生物学 / クライオ電子顕微鏡 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
光化学系I(PSI)は、シアノバクテリアでは三量体そして植物では単量体であることが広く知られている。近年、研究代表者らはシアノバクテリアであるアナベナから新しいタイプの四量体PSIを精製し、クライオ電子顕微鏡を用いて3.3Å分解能で構造を決定し、これまでにない色素間の相互作用とエネルギー伝達経路を明らかにした。本研究は、この四量体を形成するPSIと光エネルギーを集めるアンテナタンパク質の超複合体を単離し、その構造と機能を解明することを目的とする。 2021年度は高分解能の解析が困難であることが予想されるアンテナタンパク質サブコンプレックス、フィコシアニンを、陰イオン交換カラム等を用いて精製を行った。その精製標品と市販の結晶化スクリーニングキットを用いて約500条件で結晶化し、いくつかの条件で結晶が得られた。それらの結晶を用いて、SPring-8のビームラインBL41XU及び、BL44XUにて、X線回折実験を行い、1.5Å分解能の回折強度データを収集した。さらに、分子置換法により初期位相を決定することに成功した。 超複合体の構造解析においては、最終精製ステップに用いたトレハロース密度勾配遠心分離法で得られた複数の画分(複合体)それぞれを、負染色による透過電顕観察を行うことにより粒子の均一性を確認した。その中で最も安定で均一性が高い複合体について、クライオ電顕グリッドの調整条件を検討し、比較的良好な条件で5000枚程度のクライオ電顕画像を撮影し、単粒子解析を行ったところ、分解能が9Å程度のクライオEMマップが得られた。しかしながら分解能が足りないためモデルの構築には至っていない。撮影された電顕画像を確認したところアンテナタンパク質と思われる分子の解離が見られたため、超複合体が不安定で様々な会合状態の超複合体が混在していることが原因で分解能が良いマップが得られなかったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度の計画を順調に実行し、アンテナタンパク質サブコンプレックスの結晶から、1.5Å分解能の回折強度データを収集し、分子置換法により初期位相を決定することに成功した。また超複合体については、密度勾配遠心分離法で得られた複数の複合体それぞれを、負染色による透過電顕観察を行うことにより、比較的に均一性の高い複合体を得た。しかしながらその複合体のクライオ電顕単粒子解析によって得られたマップは低分解であり、より安定性の高い複合体を得る必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度にはアンテナタンパク質の高分解能構造を決定し、後の超複合体構造決定に用いる。また超複合体についてはこれまでの結果に基づいて超複合体をより安定な状態で調整する条件を確立する。場合によってはグルタルアルデヒドなどを用いた化学架橋により複合体の安定化を図る。良好な条件が決定できれば5000枚程度のクライオ電顕画像を撮影し、単粒子解析ののちに構造を決定する。
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