光化学系I(PSI)は、シアノバクテリアでは三量体そして植物では単量体であることが広く知られている。近年、研究代表者らはシアノバクテリアであるアナベナから新しいタイプの四量体PSIを精製し、クライオ電子顕微鏡を用いて3.3Å分解能で構造を決定し、これまでにない色素間の相互作用とエネルギー伝達経路を明らかにした。本研究は、このPSIと光エネルギーを集めるアンテナタンパク質(フィコビリソーム、PBS)の超複合体を単離し、その構造と機能を解明することを目的とする。 2022年度はさまざまな培養条件を検討することにより、鉄欠乏条件下で生育したアナベナからPSI単量体とPBSの超複合体 (PSI-monomer-PBS) およびPSI二量体とPBSの超複合体 (PSI-dimer-PBS) を安定に調製できることを見出した。鉄を欠乏した条件で生育したアナベナから調製したチラコイド膜を可溶化後、陰イオン交換カラムによって分離したのち、トレハロース密度勾配超遠心に供した。その結果、鉄が十分な条件で培養したアナベナでは得られなかった高分子量の画分が得られた。この画分の吸収スペクトルには、PSIとPBSの特徴的なバンドが見られ、また、蛍光スペクトルから、PBSがPSIコアへエネルギーを伝達している可能性が示された。さらに、BN-PAGE /2D-SDS-PAGE分析によって、リンカータンパク質であるCpcLがPSIの単量体および二量体と結合していることが明らかになった。得られたPSI-PBS超複合体それぞれについて、SPring-8のクライオ電子顕微鏡を使用して、PSI-monomer-PBSは約2万枚、PSI-dimer-PBSは約8千枚のクライオ電顕画像を取得し、現在、単粒子解析を行っている。今後、構造解析や各種スペクトルを用いた機能解析によって、その構造と機能を明らかにしていく。
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