研究課題/領域番号 |
20H02920
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
桑原 重文 東北大学, 農学研究科, 教授 (30170145)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | amycolamicin / nonthmicin / aplasmomycin / 抗菌物質 |
研究実績の概要 |
2つの新規単糖(A, Dユニット),バリンを含むテトラミン酸(Bユニット),官能基化されたtrans-デカリン(Cユニット),塩素化ピロールカルボン酸(Eユニット)から成るハイブリッド型構造を持つamycolamicinの全合成を完成させた。DEユニットについては,Sharpless不斉ジヒドロキシル化反応を用いる改良合成法を完成させ,以前に報告した方法に比べて,通算収率を大幅に向上させた。また,保護基を用いないテトラエン-アルデヒドのルイス酸触媒分子内Diels-Alder反応を鍵反応とするtrans-デカリン部位(Cユニット)の高立体選択的短工程構築にも成功した。分子最北部の新規糖(Aユニット)は,L-フコースを原料として調製した。それらのユニットを立体収束的N-アシル化反応を鍵工程として連結することで,amycolamicinの全合成を達成した。nonthmicinについては,不斉ビニロガス向山反応を鍵反応とするC6-C12炭素骨格の1工程での調製に成功するとともに,改善の余地はあるものの,C11位の不斉中心の構築まで到達した。また,C18-C27部位の炭素骨格の構築も予備的結果ではあるものの達成している。aplasmolycinについては,L-乳酸を原料とし,コバルト触媒と酸素を用いるテトラヒドロフラン環部位の立体選択的な調製を完了した。また,Evans不斉アルドール反応を用いたヒドロキシカルボン酸部位の調製も完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極めて複雑な化学構造を有するamycolamicinの全合成を達成し,論文発表することができた。Nonthmicinとaplasmomycinについては,改善の余地が残るものの,重要な構成ユニットの調製に成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
全合成を完成させたamycolamicinについては,構造活性相関研究に取り掛かる。A-Eの単独ユニット,およびそれらの複合ユニット(AB, ABC, CDE複合ユニットなど)を合成して,抗菌作用試験および細胞毒性試験等を実施する。その過程で,各ユニットのより効率的な合成法を確立するとともに,多様な類縁体の合成へと展開するために,各ユニットの合成法の適用範囲についても調べる。有望な活性を示す(複合)ユニットが見出された場合には,それらの構造活性相関研究についても検討する。nonthmicinについては,C11位の不斉中心の構築法の改善に向けて検討するとともに,炭素鎖の延長によりC6-C18セグメントを完成させる。また,C18-C27部位の不斉中心を含めた完全な調製法,官能基変換によるC18-C37部位の構築法,および塩素含有テトロン酸部位(C1-C5部位)の調製法を確立し,各部位の連結によるnonthmicinの全合成の完成を目指す。aplasmolycinについては,テトラヒドロフラン環部位のさらに簡潔な合成ルートを確立する。また,ヒドロキシカルボン酸部位の炭素鎖延長を行ってテトラヒドロフラン環部位との連結を試み,aplasmomycinのモノマーの調製およびその二量化による全合成の完成を目指す。
|