研究実績の概要 |
[1] テトロドトキシン (TTX, 1)の新規類縁体の探索と生合成経路の推定: フグから高分解能LC-MSを用いて、さらなる新規類縁体を探索した結果、2種の新規類縁体が見つかった。どちらも非常に存在率が低い成分であったが、各種クロマトグラフィーを用いて、単離方法を確立できた。クライオプローブを用いたNMRで精密に構造解析を行っている。また、海洋のTTX生合成と比較するため、イモリからも新規類縁体やTTX関連化合物を同様に探索した。その結果、1-hydroxy-8-epiTTX (2) , 1-hydroxy-8-epi-5,11-dideoxyTTX (3), Tgr-238 (4), Tgr-240 (5), Cep-228A (6)を発見し、単離、構造決定し、これらの化合物の構造とTTXの推定生合成経路における位置付けを考察した(Journal of Natural Productsに論文発表済み)。 [2] サキシトキシン (STX, 7)の新規類縁体の合成と生合成・代謝経路の推定: 生合成後半部の三環形成反応機構の解明のため、連携研究者の長澤和夫教授ら(東京農工大学)が合成した合成中間体より、数段階の反応で、STXの生合成における推定生合成中間体を少量合成した。その合成品を標品として、有毒藍藻や有毒渦鞭毛藻類の粗精製物に存在するのかどうかを高分解能LCMSMSでの分析を進めている。一方、ホタテガイ中腸腺より、STXの類縁体として初めて、STXと環構造の異なるヘミアミナール型の類縁体M5-HA (8)とM6-HA (9)の存在を発見し、8は単離してNMRで構造決定した。また、9は8からの化学誘導で構造決定した。これらは、渦鞭毛藻類からも報告されており、STX類の代謝産物と考えられた(Chemosphereに論文発表済み)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、フグから2種のTTX新規類縁体が見つけ、単離方法を確立した。また、イモリからも新規類縁体やTTX関連化合物を探索し、1-hydroxy-8-epiTTX (2) , 1-hydroxy-8-epi-5,11-dideoxyTTX (3), Tgr-238 (4), Tgr-240 (5), Cep-228A (6)を発見し、単離、構造決定し、それらの生合成経路を推定し、論文発表した。一方、STX類についても、三環の推定生合成中間体を少量だが合成できた。また、ホタテガイ中腸腺より、STXの類縁体として初めて、STXと環構造の異なるヘミアミナール型の類縁体M5-HA (8)とM6-HA (9)の存在を発見し、構造決定し、STX類の代謝経路を推定できた。これらも論文発表できた。以上のことからおおむね順調に進捗したと考えている。
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