研究実績の概要 |
[1]テトロドトキシン(TTX)の新規類縁体の探索と生合成経路の推定:フグより発見した超微量のTTX類縁体2種について構造解析に必要な量を単離でき、クライオプローブを用いた2DNMRを測定し、構造解析を行った。その結果、1種は9-epiTTXのヘミラクター体と10,8-lactone体の混合物であった。これらは平衡混合物と考えられたがNMRでは変換は確認できず、遅い平衡と考えられた。また、これまでのTTXおよび類縁体はヘミラクタール体と10,7-lactone体の平衡混合物であり、9-epi体は特殊であった。そのため、それぞれについてエネルギーを計算して比較したところ、9-epiTTXでは、10,8-lactone体が10,7-lactone体より安定であることが示され、実験結果が裏付けられた。もう1種の化合物(Tb-242b)は、スピロ二環性グアニジノ化合物でTTX前駆体と推定しているTb-242aの9-epi体であった。これらの新規TTX関連化合物の構造の比較から、TTX生合成において9-epi体を生成するシャント経路が存在することが推定された。以上の結果はJournal of Natural Products 2022に論文発表した。 [2]サキシトキシン(STX)の新規類縁体と生合成経路の推定:STX生合成において、三環を形成してから酸化される経路を想定し、最も酸化度が低く、STXの特徴である三環を有する化合物を、研究協力者の長澤和夫教授(東京農工大学)らの合成中間体から誘導して、化学合成した。その化合物を用いて、淡水産の有毒藍藻や、海産有毒渦鞭毛藻類中に存在するかどうかをLCMSで探索した。
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