研究課題/領域番号 |
20H02926
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大沼 正人 北海道大学, 工学研究院, 教授 (90354208)
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研究分担者 |
中村 卓 明治大学, 農学部, 専任教授 (30328968)
佐藤 眞直 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 産業利用・産学連携推進室, 主席研究員 (30360837)
金田 勇 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (30458129)
栃原 孝志 酪農学園大学, 農食環境学群, 講師 (70458131)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チーズのナノ構造 / カゼインミセル / コロイド状リン酸カルシウム |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、酪農学園大学において、ホモあり/無しのゴーダチーズを作成し、その構造と物性を検討した。その結果、ホモありゴーダチーズにおいて、力学物性と構造がホモなし(通常)ゴーダと明確に異なり、3回の検証試験でもいずれも同様な結果が得られた。すなわち、食感においては官能試験でも指摘された「やわらかさ」や「なめらかさ」が力学物性としても小さな弾性率として観測される。さらに、それに対応するナノ構造がラボX線超小角散乱(USAXS)およびSPring-8 BL19-40mUSAXSプロファイルのギニエ近似による解析では球状粒子の直径に換算して、通常ゴーダ(ホモ無し)が2ミクロン以上であるのに対し、ホモありでは1.3ミクロンであった。熟成に伴い、両者の差は縮小するが、大小関係の反転は生じず、ホモありチーズでは標準ゴーダに比べ、カゼインミセルの凝集構造ネットワークが常に微細であることを明確に観測できた。また、熟成と構造との関係においては、ミセル凝集体のサイズやCCP体積分率などの各種パラメータに2から4週間付近で不連続な変化が観測され、タンパク質の分解が示唆された。さらに、CCP凝集体のサイズ変化について熟成前後の変化を観測すると、熟成前は3から4nmに相当する0.6nm^-1付近の肩状の散乱が2ヶ月後には凝集により、0.2nm^-1前後の位置に移動する。これを指標として構造上の熟成度を判定するとホモありゴーダでは3週間程度で既に構造上の熟成が進行しているのに対し、標準ゴーダでは依然として0.6nm^-1の構造が残存している。この結果はホモありゴーダにおいて、構造上の熟成が促進していることを示すと考えられる。以上の結果については、2021年8月開催の食品科学工学会において、「原料乳へのホモジナイズ処理がゴーダチーズのナノ構造に与える影響」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロセス差によるナノ構造の差と食感に影響する力学物性との相関について、再現性を含め、確認できているため、この評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
熟成中期におけるナノ構造の不連続な変化について、電子顕微鏡による直接観察による確認と、小角散乱データが示すコロイド状リン酸カルシウムの凝集について、別な手法からの確認を行い、研究を総括する。
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