研究課題/領域番号 |
20H02928
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白川 仁 東北大学, 農学研究科, 教授 (40206280)
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研究分担者 |
大崎 雄介 東北大学, 農学研究科, 助教 (40509212)
SULTANA HALIMA 東北大学, 農学研究科, 助教 (50866837)
何 欣蓉 北海道大学, 保健科学研究院, 特任講師 (50815561)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビタミンK |
研究実績の概要 |
ビタミンK(VK)は、血液凝固因子や骨タンパク質の翻訳後修飾(グルタミン酸残基のγカルボキシ化)に必須の因子で、我々は緑色野菜や発酵食品、動物性食品を通じて摂取している。摂取されたVKは、肝臓や骨に分布し、先に示した作用を示す。一方、膵臓、脳、腎臓、生殖腺などにも存在しているが、未だこれらの組織における役割は明確になっていない。本研究は、脳におけるVK、特にメナキノン-4(MK-4)の作用を明らかにすることを目的とした。本年度は、培養ミクログリアにおける抗炎症作用の作用機序の解析と、ヒト型PXRマウスに、MK-4を給餌した場合の脳機能に与える影響を解析した。マウス由来株化ミクログリアをMK-4で前処理した後、リポポリサッカライド(LPS)で刺激し、誘導される炎症性サイトカインの発現を見ると、MK-4処理により発現量が低下する。この炎症性サイトカインの抑制は転写因子NFκBのリン酸化と核内移行が抑制されることによって起こる。この分子機構を解析する目的で、MK-4の側鎖と類似の構造を有するゲラニルゲラニオール(GGOH)を用いて解析したところ、GGOHはMK-4と同様、LPS誘発の炎症性サイトカインの発現を抑制した。また、GGOHはNFκBのリン酸化と核内移行を抑制し、これが上流のリン酸化酵素であるIKKの活性化低下によることを明らかにした。GGOHに加えて、ファルネソール、フィトールの処理によっても、炎症性サイトカインの発現量が抑制されたことから、MK-4の側鎖構造が抗炎症性に関与する可能性が示唆された。さらに、GGOHで前処理すると、M2マクロファージのマーカーであるFizz1のmRNA発現量が有意に上昇した。このことから、GGOHはミクログリアの極性を変化させ、抗炎症作用を発揮すると考えられた。動物試験は、ヒト型PXRマウスにMK-4を与えて、飼育を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
株化ミクログリアを使った抗炎症作用の作用機構の解析は、概ね順調に進んでいる。ヒト型PXRマウスを用いた試験も飼育を継続しており、1ヶ月に一度、行動試験を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
ミクログリアと神経細胞の共培養系を構築して、MK-4による神経細胞の細胞死抑制作用を示す。ヒト型PXRマウスに加えて、早期に認知機能が低下するモデルを用いて、MK-4による認知能維持を示す。
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