ビタミンK(VK)は、プロトロンビンなどの血液凝固因子やオステオカルシンなどの骨タンパク質の翻訳後修飾(グルタミン酸残基のγカルボキシ化)に必須の因子である。我々は緑色野菜や発酵食品、動物性食品を通じてVKを摂取している。消化管から吸収されたVKは、肝臓や骨に分布し、上述の作用を示す。一方、膵臓、脳、腎臓、生殖腺などにも存在しているが、未だこれらの組織における役割は明確になっていない。本研究では、脳内におけるVK、特にVK2のひとつであるメナキノン-4(MK-4)の作用と脳機能との関連について解析することを目的とした。本年度は、神経細胞の細胞死やヒト型PXRマウスでの認知機能への影響について解析を行った。マウス海馬由来神経細胞HT-22をグルタミン酸処理して細胞死を誘導したときのMK-4の影響をみたところ、MK-4の前処理によって細胞死の抑制が観察された。また、過酸化水素による細胞死誘導に対しても、MK-4は抑制効果を示した。さらに、他のビタミンとの共処理よって、抑制作用の増強効果もみられた。以上のことから、脳内のMK-4は老化などに伴って増大する神経細胞での酸化ストレスに対して防護的に働き、認知機能の維持に関与することが示唆された。3ヵ月齢のヒト型PXRマウスにMK-4を強化した試験食を与えて、18ヵ月間飼育した。19ヵ月齢時に、受動回避行動試験を行ったところ、MK-4食の給餌による影響は観察されなかった。解剖時に採取した組織を用いて、BDNFやCREB、ERKなど認知機能に関連する因子の発現量について解析を行っている。
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