研究実績の概要 |
①前年度の試験から,ラットでは,上部消化管から大腸に流入するムチンは一日あたり150mg程度であり,O-結合性糖鎖当量換算では40μmolであることが明らかになった。この試験結果に基づき, 大腸へのムチン流入量が2倍(0.6%PM群)または3倍(1.2%PM群)となるように精製ブタ胃粘膜ムチンを添加した飼料を調製した。この飼料をラットに2週間摂取させ, 大腸へのムチン流入量の増加に伴うSCFA産生量, 腸内細菌叢の変化が腸管免疫系に与える影響について解析を行った。その結果,大腸へのムチン流入量の増加は制御性T細胞およびIgAプラズマ細胞の比率を増加させることが明らかとなった。また,炎症性サイトカイン発現量の低下も認められた。これらの結果は,大腸へのムチン流入量の増加は腸管免疫系に対して抑制的に働くことで,腸管恒常性に寄与している可能性を示していると考えられる。 ②前年度の結果から,ラットではムチンの大腸への流入が腸内細菌叢の構成比を変化させることが明らかとなった。この結果を受け,ヒトでも同様の変化が認められるか否かについて,ヒト便を用いた嫌気培養を行い,SCFA産生量, 腸内細菌叢の変化について解析を行った。ラットと同様に,ヒト腸内細菌叢による発酵でもSCFAのうち特に酪酸が産生されやすいことが明らかとなった。一方で,ヒトとラットでは腸内細菌叢の構成が異なることを反映して,増加する菌種は異なっていた。
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