研究実績の概要 |
いわゆる「食品セラミド素材」として、様々な生物由来スフィンゴ脂質が用いられており、なかでも皮膚への効果が大いに期待されている。しかしながら、その詳細なメカニズムは不明であることから、本研究では「スフィンゴ脂質の経口摂取による皮膚バリア機能向上作用」のメカニズムの解明を目指して検討を進めた。 これまでの検討によって、スフィンゴイド塩基の吸収の選択性にP-糖タンパク質が寄与することが示されていることから、スフィンゴシンが選択的に吸収には、特異的な結合分子の関与が推測されてたため、スフィンゴイド塩基に結合能を有する分子を探索した。MALDI-MSやウエスタンブロット法によって、スフィンゴイド塩基に結合する候補1分子が同定され、ミトコンドリアの膜透過性に関わるタンパク質や糖鎖修飾に関わるタンパク質が含まれていた。ドッキングシュミレーションにより想定される結合部位も示されたが、スフィンゴイド塩基の化学構造の違いによる結合の違いは認められなかった。 また、スフィンゴ脂質の代謝物や体内動態を調べるために、安定同位体ラベル化物を用いて、マウスに経口摂取させたときの血中動態について更なる検討を進めた。13Cですべての炭素が置換された菌体由来セラミド(t18:0のスフィンゴイド塩基にC14:0h, C16:0h, C24:0がそれぞれ結合した分子種)が経口投与後のマウス血漿から検出され、経口摂取されたセラミドの一部は構成要素まで分解されずに、直接吸収されることが示された。このとき、ヒドロキシ脂肪酸を含む分子よりも、ノルマル脂肪酸を含む分子のほうが吸収されやすいこともわかった。さらにラベル化されたスフィンゴイド塩基にラベル化されていない脂肪酸が結合した分子も検出されたことから、一部のセラミドは消化を受けて吸収された後、体内でセラミドへと再合成されていることも明らかとなった。
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